インポッシブルなミッションを受けてChesterで野宿しそうになった話


3度目のイギリスは本当にひとり

2018年11月の旅のめあてはアコースティックツアー。3度目のイギリスです。実はそれまで2度のイギリス旅では、1会場を除く全てのライブ会場で別の日本人ファンの方とご一緒させていただいており、いざとなったら百戦錬磨のその方が居る という事が、ずっと私の心の支えになっていました。 世の中には日常的にイギリスまでライブを見に行く人もたくさんいるのです…。すごいなぁ。

しかし3回目のイギリス旅、心の支えのその方は行かないという事だったので、ついに完全に私ひとりで旅する事になったのです。

今回私がライブチケットを取ったのは 4日間連続の4会場。今までになく長距離・広範囲の移動で、中にかなり小さな街が一ヶ所混ざっているという、私にとってはかなり難易度の高い旅です。


もしもこの旅でどんな事が待ち受けているか事前に分かっていたら、もしかしたら私はこの旅を諦めていたかもしれません。私としてはそれぐらい大変な旅になりましたが、それは同時に人生最高レベルにエキサイティングで楽しく、心に残る旅でもありました。

自分がまだ本気で困る事が出来て、それを笑っちゃう事が出来るというのは、とても楽しい発見です。 皆さんは最近本気で困った体験、ありますか?私はあります!今回のChesterの初日はその中のひとつです。


英語とひもじさとキッチン

そもそもどうしてこれから書くような事態が起こってしまったのか、改めて考えてみると、問題の本質はやはり英語が話せない、話したくないということに立ち戻ります。

1)現地の人と英語でやり取りするのが怖くて、ひとりで飲食店に入れない。
2)イギリスのスーパーには温めれば食べられる美味しそうなスープやパイが沢山売ってる。(スーパーも怖いけど飲食店よりマシ)
3)電子レンジか、簡単なキッチンが付いている宿に泊まりたい!

そういう流れだった訳です。日本同様、イギリスにもキッチンつきタイプの宿がそこそこあります。私の数少ない経験では、地方では2ベッドルームにフルサイズのキッチンなどファミリー向けの所が多いようです。逆に大都市ではコンパクトな部屋に、最低限のミニキッチンを備えた出張者向け?のところばかりでした。


実は2018年2月の2度目のイギリス旅の際、Bristolでキッチンつきのアパートメントタイプの宿を使ったことがありました。その時は街に到着したら管理事務所に連絡をしてスタッフと待ち合わせ、鍵を受け取り、部屋まで案内してもらうという手順でした。

その時、宿に立派なキッチンが付いていたおかげで、スーパーで野菜とベーコンを買って野菜スープを作って食べることができたという良い思い出がありました。連日の移動と時差ボケと緊張に晒された身には、そういう食事がとっても嬉しい。

そんな経緯もあり、2018年11月の旅では、可能な限りキッチンつきの部屋をチョイスしていたのです。


難しすぎるミッション

この旅では15時半ごろロンドン・ヒースロー空港に到着し、その日のうちにイングランド北部の街、Chesterに入る計画を立てていました。ライブ前の数日、観光する予定です。どうしてChesterへ?それは私が好きなあのミュージシャンの故郷だからです!

Chesterの宿の管理事務所からは1週間ほど前にメールが入り、宿泊日当日に鍵の受け渡しなど詳細のメールを送るという連絡を受けていました。ギリギリすぎるので心配していたのですが、ヒースロー空港に着いてスマホをネットに繋いでみると、メールが来ていることが分かり、ホッと一安心。


ところがこの日はいつにも増してヒースロー空港が混雑しており、ロンドンのEuston駅をChesterに向けて出発した時には、既に19時を過ぎていました。


ヒースローを出た時には良い夕暮れでした。呑気に写真撮ってる場合じゃなかったんですが、写真を撮らなかったからといって何か良いことがあったであろう訳もなく。

鉄道内もとても混み合っていて、賑やかな若者たちと一緒にデッキで立ちっ放しでしたが、道のりはせいぜい2時間半。


Chesterに向かう鉄道内からストーリーにアップしたウキウキのヒャッハー動画。

そんなに長くないしいいか~と思いながら、イヤホンで音楽を聞きつつ、その日の宿の詳細が書かれたメールを改めて確認してみました。ざっくり要約すると、

『22時までに〇×というコンビニエンスストアに行き、レジにいる男性にあなたの名前を告げてください。彼からアパートの鍵とエントランスの電子キーが渡されます。その後〇×ストリートに行き、電子キーでエントランスの門を開けたら右、そこにある扉を電子キーで開けてリフトで2nd Floorにあがるとあなたの部屋があります


本邦初公開、これがMI6(仮)からのメールだ!改めて見てみると、もしかしてネイティブじゃ無い人が書いた?

これは何だろう?テープレコーダーが回りきったところで最後に「幸運を祈る」って言われて爆発するやつかな?イギリスだけに?

チェックインが22時までというのは事前に知っていましたし、恐らく今乗っている鉄道がChester駅に到着するのは21時すぎ。Google Mapで確認すると、Chester駅からコンビニエンスストアまでは徒歩10分程度。よほど道に迷わない限り鍵を受け取るところまでは問題ないでしょう。


Chester到着、鍵をゲットしたところまでは良かったが…

鉄道が到着したChesterの駅は当然もう真っ暗。11月のイギリスは寒いぞ!

それまでイングランド南部から中部までしか行ったことがなかったので、初めての北部の町、しかも好きなミュージシャンの故郷、そしてかつて彼のバンドが結成されたこの街に来ることが出来て感無量です。ロンドンから2時間半なので、北海道で生まれ育った私としては大した距離ではないのですが、なんだか遠くまで来たな~という感覚。

Chesterは英国の中でも特に中世の面影を残した城壁都市として人気の観光地だそうです。英国はどこに行っても歴史ある街ばかりで、旅してても楽しいんですよね。


ついに憧れの聖地Chesterへ!

さて、私は早速指示されたコンビニエンスストアを探さなければなりません。駅を出て繁華街を横目で見ながら街の中心部からは少しだけそれた、繁華街の外れの方角に歩きます。パブとケバブ屋さんはまだ営業中。その先に、あった!目指すコンビニエンスストア。

そこは小さな個人商店のようで、パッとしないサンドウィッチや飲み物、雑誌、洗剤などが青暗い照明の店内に雑然と置かれています。映画みたいだなぁ。

Pod Noodleとチョコレートとビールを買い、ひとつしかないレジで「女性に」名前を伝えました。 どっちでもいいけど、男性じゃない*じゃん!

*そういえば、誰かのペットを褒める時など、性別が分からない時はheにするって聞いたことがある。そういう事かな?

にこやかな女性*に小さな紙包みを渡され、お礼を言って〇×ストリートに向かいます。包みの中に入っていたのは、普通のお部屋の鍵と、ICチップのようなものが入っているらしいプラスチックのキーホルダーのようなもの。

*全体的に見た目が移民ぽい皆さんの方がにこやかな確率が高い気がします。それほどの厳しい競争に晒されているのか、異邦人同士の共感のようなものがあるのか、まだ私には分かりませんが。


この時点で概ね21時半過ぎ。既にかなり不安でした。実はそれまでに何度Google Mapを見ても、宿の場所がはっきり分からなかったからです。通りの名前は確認できるのですが、どの建物なのか分からない。

Street Viewを見ても全てオフィスビルのようで、それらしい建物が見当たらないのです。でもとても小さな通りなので、もしかしたらStreet Viewの更新の後に宿が出来た可能性もありますし、近寄らないと分からない程度の小さな看板やプレートが出ているのかもしれません。現地で確認するしかないと思っていました。


見つからない!

で、 〇×ストリートです。バス通りのパブの角を曲がった小さな通り。ひとけのない通りに街灯が幾つか点いていますが、ひととおり歩いても、案の定というか、宿の建物が分からない。これはまずい。日本であれば客を迎える施設には何かしらの表示とか、 建物の入口に明かりがついてるとか、それなりの設えがあるはず。

でも、そこでは路地の全部の建物が真っ暗で電気もついてない。あとは駐車場みたい。 そんなに大きな通りではないのです。建物は全部で15軒ぐらいで、この通りに面した入り口がある建物は10軒も無さそうです。

道を間違ったのかな?と思って何度もバス通りまで戻ったり、行ったり来たりしましたが、 やっぱりここで間違い無さそう。

心臓がドキドキし始めます。多分20~30分ぐらい、宿を管理しているところの問い合わせ先の電話番号を検索しながら、周辺を歩き回りました。で、管理事務所に電話してみたんですよね、確か。でも当然誰も出ません。メールを送ったってこの時間では仕方ない。うーん。これは詰んだかな。

それまでの旅でも、やむを得ず深夜に外を歩く事は何度もありましたが、22時を過ぎてこんなひと気のない暗い通りに、どっからどう見てもアホ面した観光客のアジア人がスーツケースを持ってひとりで立って、長々とスマホの画面を眺めているのは、流石に怖い。危険すぎます。


この宿は諦めて、駅まで一旦戻って仕切りなおそう。駅のインフォメーションはもう閉まってるかな?駅ならまだ人がいてここよりは安全だろうし、どこかに座って、今日これから予約を受けてくれそうな、分かりやすい別のホテルをネットで探そう…と思い始めた頃、駐車場の金網の柵が開いて、ガシャーンと閉まる音がしたのです。誰か人が出てきた!

誰かが歩き去って行ったのを見届けてから、頑丈そうな鉄の柵に恐る恐る近寄ってみました。大きな観音開きの扉は車が出入りするところのようで、チェーンで施錠されているようです。そしてよく見るとその隣に人が出入りするための扉…。

電子キーを扉のあちこちに滑らせてタッチしてみると、ある場所でカチッとロックが解除される音。なにこれ?ドラクエ?脱出ゲーム?

明るくなってから撮影した宿のエントランス。これはポンコツの私じゃなくても難易度高くない?

これで安心だと思ったら大間違い。敵は手強い。

とにかくホッとしました。駐車場にしか見えませんが、鍵が開いたということはここで間違いない。中に入ってみると、駐車エリアを取り囲むようにいくつも建物が建っているのが分かりました。どれもオフィスビルのようにしか見えませんが、右手に進んでみます。

右、右…すぐに行き止まり。建物はいくつかあって、どこも入り口には明かりがついています。Main Buildingってどれよ!?建物の入り口が5ヶ所くらい。どれが正解か分からないので、目についたところに近づいてみます。

1カ所目…どうも違うみたい。2カ所目…3カ所目…あ、ここに電子キーをタッチしろと書いてある!タッチすると扉が開きました。やったね!ダンジョンクリアもかなり近い?!


さて、もう一度メールを見返してみましょう。リフトで2ndフロアに行って…あなたの部屋は21号室です。すぐ横にエレベーターがあったので2ndフロア、つまり3階に上がりました。

エレベーターを降りると正面の壁に部屋の番号の案内が書かれたプレート。21、21、21…

うん。無い。

SNSでフォロワーさんに「部屋が無いよ〜(泣)」と泣きついていた時の画像。

うん、オラだんだんワクワクしてきたぞ(サイヤ人並み)!プレートに書かれていないだけかな?と思ってフロアの廊下を少し歩きまわってみましたが、21の部屋はありません。22とか23とか24はあるのになぁ。

もう少しなのに惜しい!大体さっきから人の気配が全然しないよー。怖いよー。暗いよー。ここでもぐるぐる10分くらい迷っていたと思います。

どうにもならないので、もう一度地上階に降りてみることに。少しあたりを見渡すと、建物全体の案内図がありました!21、21、21…

1stフロアじゃん!メールの嘘つき!

エレベーターで2階に上がり、フロア案内を見ると確かに21号室が存在しています!ついに到着!イエイ!


やっとたどり着いた部屋が意味不明な間取りの3階建て(1階は巨大なキッチンとトイレ、2階に完全にバラバラの部屋でリビング、バス・トイレ、寝室、3階に何となくオバケが出そうな寝室)で、しかも3階に行く階段の電球が切れてて超怖かったとか、ドライヤーと栓抜きがなくて不便だったとか、買ってきたPod Noodle (Chicken and Mushroom)が口に合わなくて全部食べられなかったとか、そんな事はもう良いのです。この部屋にたどり着いたというプレシャス!どれだけホッとした事か!

しかしこの旅はこの後もドキドキ体験が目白押し。いや~旅って本当に良いものですね!(白目)



初イギリス、初ひとり海外、最初の夜


空港からホテルへ

2017年9月、初めてのひとり海外旅行。東京からロンドンに向かう飛行機の中は、日本人のCAさんや日本人客がいっぱいで、国内気分でいられます。でもヒースロー空港に着いて「行ってらっしゃいませ」という日本語に送られながら飛行機を降りると、そこからはついにひとりです。

ヒースロー空港名物、大行列の*入国審査では、滞在目的と滞在場所、旅行期間は聞かれるかなと予想していたのですが、「現金をどのくらい持ってますか?」の質問は全く想定外で、シドロモドロ。が、答えようとする意思は認められたらしく、入国官が無表情でスタンプを押してくれました。ずいぶん厳しいと聞いていた割には比較的あっさりと通して貰えたかも。

*確かこの時は1時間ぐらい。これでも早い方。


ヒースロー空港の入国審査については、2019年5月からICチップのついたパスポートを持っている日本人観光客は自動化ゲートを通れるようになったそうです。ありがたい!日本国のパスポートのブランドを作り上げた先人の皆さんに感謝です。次回からは待ち時間無く、プレッシャーからも解放されて楽になります!それにしてもここでもICチップ…夢でうなされそう


さて、ここからホテルに向かいます。謎の流れで地下鉄のワンデーカードを入手したので、あとは地下鉄に乗るだけ。空港からその日滞在するホテル最寄りのKings Cross St. Pancras駅までは、地下鉄のPiccadilly Lineで乗り継ぎなし、約1時間の道のりです。


余談ですが、さすが世界中の人が訪れる大都会、ロンドンは交通機関の表示がとても行き届いていてわかりやすい。地下鉄、鉄道、バス、どれもみんな東京よりもずっと使い方が簡単だと思います。

ロンドンに限らず、イギリスでは落ち着いて案内表示をしっかり見ていれば、行き先を間違える事はほとんどない…かな?でもロンドンのCircle Lineだけはちょっと苦手です。同じホームに違う行き先の電車は入れないでプリーズ!


Kings Cross St. Pancras駅

地下鉄から眺めていると、ちょうど日が暮れる時間帯で、 外がだんだん暗くなってきました。地下鉄の中は完全に多国籍。私の不安は募るばかり。到着したKings Cross St. Pancras駅周辺は、地方からの鉄道と地下鉄駅が集合する巨大な場所でした。帰宅する人の流れに逆らってホテルを目指します。

9月の夜の冷たい小雨が降る中、ヒサシや屋根もない路上で寝ている人もそこここに見かけます。駅周辺の歴史のありそうな威圧感のある立派な建物と対照的です。


そこら辺の建物がザ・大英帝国の威光で常に威圧してくる

事前にGoogle Street Viewで周辺の様子は把握していたので、スムーズにホテルに到着。ホテルのドアに近寄ると、にこやかなドアマンが荷物を持ってレセプションまで案内してくれます…イギリス人に初めて笑顔で接してもらったかも!


ホテルのチョイスは失敗のような嬉しいような

最初のホテルのチェックイン…は、実は失敗でした。ただでさえ容赦ないスピードで説明を受けて理解度3割ぐらいのところに、最後に「朝食はどうしますか?」と聞かれ、「食べます」と言ってしまったのですが、これが失敗です。特に朝食券などをくれるわけでもないので、どうしたら良いのか分からず、結局朝食を食べませんでした。が、後日しっかり料金は引かれてしまいました。

これはもうコミュニケーション出来なかった自分が悪いので仕方がありません。分からなかったら恥ずかしくてもちゃんと聞き返すんやで(未だに出来ない)。イギリスではどうやら日本と違って、朝食会場に行って部屋番号をスタッフの人に言う方式のようです。控えとか朝食券はありません。


最初のひとり旅ということで、この2017年の英国旅では、総じて高めのホテルを予約していました。そしてこの初日のロンドンのホテルとは確認したい事もあり、事前にメールのやり取りをしていたのです。その中で「ロンドン初めてなので楽しみにしています!可能な範囲で眺めのいい部屋だと嬉しいです!」とか確かに書いたんですが、実際チェックインして指示されたフロアに行ってみると、なんとそこは最上階。

廊下のつきあたりには一般客が入れないような大きな扉があり、その先は特別フロアのようです。私はその手前でしたが、それでも充分広くて立派なお部屋。身の置き所がない。ワガママ言ってほんとスイマセンでしたありがとうホテルの人。


もしかしてひとりで泊まったらアカン部屋じゃないだろうか。

とにかく窓の外の眺めが素晴らしいのです。はるか彼方まで広がるロンドンの夜景。全体的に光が暖色系でした。建物の色のせいでそう見えるのかな。カーテンを閉めるのがもったい無くて、寝るまでずっと開け放しにして過ごしました。


人はなぜ紐を引っ張ってしまうのか。そこに紐があるからです。

おしゃれすぎてどうやってトイレを流すのか分からなくて、とりあえず眼の前にあった紐引っ張ったらフロントから電話来ちゃったよね。一応お約束だからやっておかないと。


とにかくホテルにチェックイン出来たので、少なくとも2日間は屋根のあるところで眠ることが出来ます。ホッとしてやっと実感がわいてきました。

高校生の頃、The Clashが好きで、Portobello Marketとか、Brixtonとか、どんなところなんだろうな〜いつか行けるのかなぁと妄想してたあの「ロンドン」が今、目の前に!Joe Strummerが生きているうちに来たら良かったなぁ。でも、今更だけど私、本当にロンドンまで来ちゃった!


Scala London

大好きなミュージシャンについては、ネットでは毎日欠かさず情報をチェックしていましたが、本当に実在するのか実感が全然なかったのです。ロンドンに居るってことは、同じ街の空気を吸ってるってことに…わーどうしよう!しかも明日は実物ががががががggggg!キャーーーー!

この時点で夜の8時ぐらいだったでしょうか。ちょっと危ないかもしれないけど、でも、明日のライブの会場を見に行っちゃおう!あと、出来れば何か食べるものを買ってこよう!

ホテルから会場までは小雨の振る中、 歩いて10分ほどだったかと思います。後にライブ版が発売される事になる、あのScalaです。駅から歩いて10分もかかりません。夜8時ごろだったので、多分誰かのライブ真っ最中。明日はここで自分がライブを見るのです。感無量!(まだ始まってない) とりあえず写真。


はーるばる来たぜロンドン!

で、確か駅のお店でサラダを買った。店員さんがニコリともしなくて怖くて。で、駅の中で他の場所にM&Sを見つけて、ビールとフルーツを購入。ビールは種類が沢山ありすぎて未だに何がなんだか分かりません。

そして「明日はご飯も絶対 M&Sで買おう(店員さんさっきより怖く無さそうだし)」って思ったんだっけ。スーパーで買い物するのも緊張しすぎて苦痛だったなぁ…。この旅はこの後も全体的にひもじい感じで進んでいきます。なぜなら買い物するのが怖いから。


なんでも写真に撮っておくというのは大事ですね。豆のサラダだった。

豆のサラダとフルーツとビール。食べながらご満悦でSNSに「日本からライブ見に来てロンドンに着いた!もう明日のScalaチェックしてきたよ!」って投稿したら、 なんとアーティストご本人が「みんな明日はロンドンで会おう!」と投稿するのに私の写真を使ってくれて

「うわぁあああああああああ私の写真んんんんん!!!!!」

って大興奮しながら朝方に寝た。幸せな初日*…

*偶然にもイギリス行く時に借りているモバイルWiFiの会社から「今日はあなたが始めて弊社の商品を使った日です!」ってメールが来た。イギリス初日は、2017年の9月20日でした。タイムリーだなぁ。


英語の勉強が続かない問題


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それが私には楽しくなかったから*

*リーナス・トーバルズの本のタイトルをマネしてみました。ちなみに本は読んでません。

私が英語学習で一番大事にしていること、それは継続することです。

本当は、上のひと言で終わってしまいたいぐらいですが、もう少し噛み砕いてお話したいと思います。まず、個人的な事実として、私には面白くない事を続けられないという特性があります。誰でもそうだろう何を言ってるんだ、と言われるかもしれませんが、その、あたり前のところをよく考えてみたい。

例えば、海外旅行に行く。英語が全然聞き取れないし、言いたいことが口から出てこない。よーし心を入れ替えて、今度こそ本当に英語の勉強をしよう!と決心します。本屋さんに行って、 新しい本を買います。 家にも沢山の勉強本を持ってるけど、新しいのを買っちゃいます。

リフレッシュした気持ちで取り組めるように、おしゃれなノートやペンも一緒に買ってしまいましょう。3,000円ぐらい使って大満足。明日から頑張ろう☆と思います。


様々な英語学習サイトで言われているとおり、一日10分でもいいから机に座って参考書を開きましょう。継続は力なり!あーでも今日Twitter見てないんだよな~。机の周りちょっと片付けたいな…。このCD最近聞いてないなぁ。そういえばあのバンドの新譜出たんだっけ?あ、あの人がインスタ更新してる!日中見かけたニュースの詳細ってどんな感じよ?あ、Youtubeで良さそうな英会話の動画発見!etc…

買ってきた新しい参考書は、最初の1ページか、良ければ5ページぐらいまでは頑張って読みますが、2度とその本が開かれる事はありません。 だって面白くないんだもん。オワリ。


何度、同じ事を繰り返したでしょうか。とにかく続かない。どの英語の参考書も見せ方や内容に工夫を凝らしていて、興味を引くよう努力してるなぁ(他人事)と思いますが、正直、どれも面白くない。

特に大人向けの学習本だと、TOEIC対策という面もあるのでしょうけども、話題が難しく、当然使われている単語も難しくて、内容を把握するためのハードルが高いのです。

一説によると8割の人が英語学習を挫折しているそうです。2016年の調査ですが、 DMM.com のアンケートの数字がありました。この記事によると、挫折した経験がある人が84.7%。再度取り組んだ人もいるでしょうから、8割ぐらいが妥当な数字かもしれません。挫折する人が8割!じゃあ2割の人は続けてるの?そんなにいる?本当に?と思わなくも無いですが、とにかくたくさんの人が挫折しているのは事実だと思います。むしろ高価な教材を売り続けるために、挫折するように仕組まれているのでは?と、自分の怠惰を棚に上げて、謎の悪の組織に疑いをかけたくなるレベルです。


毎日参考書を開くなんて私には無理

私には無理なのです、毎日デスクに座って参考書。そもそも会社から帰宅した時点で、やる気なんて無くなっているんです。ゼロどころかマイナスです。帰宅した後に家事や趣味など何かやってる方は、心と身体の持久力が凄いなぁと思います。私はご飯も食べずにビールだけ飲んで、顔も洗わず寝てしまいたい。

ちなみに休みの日にカフェで勉強してるふりをするのは得意です。

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NHKのラジオ講座を聞く、BBCのラジオを聞く、BBC Learning Englishを聞く、TEDを見る、ドラマ「フレンズ」を英語字幕で見る、スカイプ英会話をやってみる、中学生レベルの文法書をひととおり終わらせる。瞬間英作文に英語アプリ、発音アプリ。あれこれ手をつけてみましたが、どれも私には続ける事が出来ませんでした。


自分の脳のご機嫌をとりながら、雑に継続する

「勉強というものは忍耐だ!英語をマスターしたいなら我慢と努力をせよ!瞑想だ!運動だ!野菜1日350gだ!」というご意見もあることでしょう。しかし私の脳はそのように出来ていません。

だいたい「今まで出来なかったことを出来るようになろう」としている訳ですから、脳が苦痛を感じない訳がない。脳は苦痛を感じれば感じるほど全力でその状況を回避しようとするでしょうし、インプットの効率も格段に悪くなるに違いない。

よって、私が英語の勉強の継続に必要としていたのは 「内容に興味があって面白いと思える」 「大体理解できる、でも簡単すぎない」「何か他の事をしながらする事が出来る」 教材でした。

ちなみに、上に書いた条件は、言語学者や言語習得の専門家の方が言っていたことの半分受け売りです。英語を勉強している中でのちに知ったセオリーですが、 言われてみれば私も似たような事を考えてたなと。

世にある大量の英語教材から自分に合ったものを見つけるのは割と大変です。英語のレベルも興味も人それぞれなので、絶対にこれが良い!などというものはないと思います。自分で「今の自分に合った」教材を探すしかないのです。英会話でも、小説でも、ドラマでも、参考書でも、動画でも、ラジオでも良いと思います。もしかしたら「人(いい先生とか英語しか通じない恋人とか)」かもしれません。教材がこれだけ大量にあるという事は、自分に合ったものもきっとどこかにあるに違いありません。


多聴、 多聴 、 多聴

私にとっての「自分に合っている」判断の目安は「クスッと笑えるかどうか」です。「初めてネイティブ同士の会話を聞いていてニヤリとしてしまった」「初めて英語だけの動画を5分間見て、大体内容がわかって、しかも面白かった」「映画でのやり取りが一部分だけ聞き取れた」。そういうほんの小さな成功体験がモチベーションの維持に繋がります。

きっかけが大切だと思います。毎日やっていれば、ほんの少しずつですが、理解も興味も自分の許容範囲も広がっていきます 。 私の場合、きっかけとなったのはある英語のポッドキャストでした。1年間、毎日最低1時間は欠かさず聞いています。勉強の為というより、最も楽に愉しめる娯楽だからです。耳で聞くだけなので目は疲れないし、イスに座ってる必要すらありません。


移動時間や食事の準備の時間はとても良いポッドキャストの時間です。全て集中して聞いているわけではありません。聞き流している時間帯もかなりあります。でも興味がある話題の時は自然に頭に入ってきます。日本語のラジオを聴いている時と同じです。

半年ぐらい経った頃から、別のポッドキャストにも手を伸ばしたり、 Youtube動画を見たり、少しずつ自分の「可動域」を広げています。1年前は聞いても分からなかったのに、改めて今聞いてみると、思わず声をあげて笑ってしまうぐらい面白くなっていたりすることも多々あります。つまり、多少はリスニングの力が進歩しているのでしょう。


最大のモチベーションアップ

1年間、ただポッドキャストを聴いているだけなので、未だに話すことは全然出来ません。しかし、多聴は確実に効果が出ています。

好きなミュージシャンのインタビューを聞いたら、何を話しているのか、だんだん分かるようになってきた!

私にとってはこれ以上のご褒美はありません。 1年前は1割ぐらいしか分かりませんでしたが(つまり何も分かりませんでした)、今は6割~7割ぐらいは理解出来ていると思います。ワーイ!もっと頑張ろう!!!

今のところ、英語への取り組みは、ひたすらポッドキャストを聞く事だけです。休みの日にはそれに加えて多少の文法問題を解いたり、英作文もやります。そろそろスカイプ英会話も再開しようと思っています。

自分を甘やかしつつ、面白いこと以外はやらずに、なんとかしようとするのが私の無茶な英語学習のアプローチです。このまま続けて本当に英語が話せるようになるのか?!もしかしたら20年ぐらいかかるかもしれませんが、続けていればそのうちなんとかなるでしょう!(楽観的)


Oyster Cardを買うのに苦労した話


Photo by Joseph Balzano on Unsplash

クレジットカードはICチップ必須

すでに書いた通り、私は2017年に初めてイギリスに行った際、ICチップのない、磁気のみのクレジットカードしか持っていなかったために、旅行中ほとんどの店でカードが使えないという悲劇に見舞われました。

Oyster Cardを気軽に買うことができるロンドンの地下鉄駅の券売機も、ICチップ付きカードのみの対応です。2019年現在、日本で一般的に入手できるクレジットカードはもう殆どがICチップ付きだと思いますので、あまり心配はいらないと思います。

しかし念の為、 海外に旅行に行く際には、ご自分のカードに間違いなくICチップが付いていることと、暗証番号、利用限度額は確認しておくことをおすすめします。旅行前にカードで旅行の為の買い物を沢山して、いざ現地に行ったら限度額ギリギリになっていて、ほとんどカードが使えなかった…などのうっかりも避けたいところです。


Oyster Card(オイスターカード)とは

交通系ICカードに急に「牡蠣」って名づけちゃう躍動感がイギリス人ぽくて良いと思います。

Image by Ron Porter from Pixabay

さて、Oyster Cardです。 Oyster Cardはロンドンエリアで使える交通系ICカードです。デポジットは5ポンドで、必要な金額を駅の券売機などでチャージして使用します。(カードを返すと5ポンドが戻って来るそうです) ロンドンエリアは広大で、ヒースロー空港もロンドンエリアの中に入っています。

国内の旅行でも同じですが、不案内な土地の移動で、電車やバスの切符を乗車の都度買うのはストレスがたまります。 Oyster Cardがあれば地下鉄やバスに乗る際、黄色いパネルにカードをタッチするだけで良いので、 残額には気を配る必要はあるものの、基本的にはとても便利だし気が楽になります。

地下鉄が混雑しがちなロンドンではOyster Cardの利用が推奨されており、利用を促進する為、一日の利用がある一定のボリュームを超えたら、それ以降課金されないようになっていたり、切符を買うよりかなりディスカウントされた料金で乗ることができたりと、高いインセンティブが設定されています。バスに至ってはOyster Cardを持っていないと乗ることもできないとのこと。1日だけならワンデーカードでも問題ないと思いますが、数日滞在したり、今後も何度かロンドンを訪れる事になりそうな場合は入手したほうが良さそうです。

ロンドン名物ダブルデッカー。2階に行くか1階にとどまるか、いつも迷ってしまう。Oyster CardとGoogle Mapさえあれば、ロンドン近郊はどこでも大丈夫!

Oyster Cardの入手

Oyster Cardは事前に日本で購入する事も可能ですが、手間や送料を考えると、現地入手する予定で問題ない*と思います。ロンドンの地下鉄駅の券売機や、駅に入っているキヨスクのようなお店で気軽に買うことが可能です。SuicaやPasmoのようなものですね。但し、日本のように交通機関以外の小売店や飲食店で使える場所はあまり見かけません。

* 面倒に陥る可能性も無くはないですが…私のような間抜けな例はあくまでレアケースだと思います。

地下鉄駅の券売機はありがたいことに日本語表記に切り替えることができます!Oster Cardが買えてチャージ(Top Up)ができるマシンと、チャージのみのマシンがあるので気をつけましょう。画面の一番下には国旗が並んでいて、日本の国旗を選ぶと日本語に切り替わります。「新規カードを購入する」を選んで、必要なカードの枚数とチャージ金額を選んで、現金を入れるか、クレジットカードを入れてカードの暗証番号を入力したらOKです。とても簡単です!私でもできました。


どうしてこうなるの!?

さて、ここからが私、独自のトラブルです。なぜか券売機からOyster Cardが出てきません。画面上は通常に取引が終わった様子で、特にエラーなどが発生している様子もありません。ただ、物理的にカードが出てこない。

意外なところに取り出し口があるのかな?と泣きそうになりながらあちこち覗いてみましたが、どこにも見当たりません。大抵、駅のチケット売り場には係員のような、ガードマンのような方が立っていて、この時も制服を着た190cm×120kgはありそうな大柄な男性が近づいてきて「どうしました?」と声をかけてくれました。「私のオイスターカードが無い…お金を入れたんですが…」「いくら入れました?」と言いながら、券売機を拳骨でガンガンで叩き始めます。「5ポンド、プラス30ポンド…35ポンドです」

散々機械が殴りつけられた後(私のせいでゴメンよ機械)、別のスタッフが呼ばれて券売機の裏に入っていきました。雑談を交わすほどの英語力も無い私は、 ニコリともしない大柄な男性スタッフと2人、無言で立っているしかありません。こういう時に天気の話でも出来ると良いんですけどね…。そのまま待つこと約15分。何がどうなったのかはわかりませんが、とにかく機械のどこかにつまっていたらしい私のカードが取り出され、ついに30ポンドがチャージされたOyster Cardを入手することができたのでした!ブラボー!

この手のトラブルは自分では避けようがありません。 ただOyster Cardを買うというだけでこれほどの大騒ぎ。 しかし Oyster Cardを到着初日に買おうとしたら売り切れておりその後2つの駅に立ち寄っても買うことが出来ず、この駅でやっと入手できたOyster Cardは私の目には宝物のように輝いて見えたのでした。(先が思いやられる…)


イギリスとクレジットカード


Photo by Blake Wisz on Unsplash

現金派?クレジットカード派?

突然ですが皆さん、クレジットカードってどんな風に使ってますか?

「毎日使うよ!」「現金派だから基本持ち歩いてないよ」「クレジットカードにはもう二度と手を出すなって家族から言われてる」「審査に通りません…」等、クレジットカードとの付き合い方は人それぞれですよね。

私はイギリスに行きはじめるまでは、ローンを組む感覚でしかクレジットカードを利用していませんでした。少し大き目の買い物をする時だけカード払いで、その他は全て現金払い。何となくの習慣です。


ヨーロッパではクレジットカード必須

しかしヨーロッパに行くとなると話は別です。私が数十年前にヨーロッパに行った時には、すでに現地では日常的にクレジットカードが使われていました。

2017年秋、初めてイギリスへ行く旅で、私は手持ちのクレジットカードを2枚持っていこうと考えていました。いずれもカード会社に暗証番号を確認し(何故か地元ではカード使用の際に暗証番号を聞かれたことがありません。全てサインです。田舎?)、ポンドと円で現金も準備をして、お金についてはもう安心、と思っていたのです。


イギリスと日本の(私の)カード事情の違い

思い返せば、自分の過ちに気がつくのが遅れたのは、最初のホテルのチェックインで問題なくカードが使えてしまったから、かもしれません。宿泊料は事前に決済済みでしたが、チェックインする時にフロントの方が説明してくれたところによるとどうやら、そのホテルではデポジットが100ポンド要る、ホテル内での利用がなければ全額後で返金される、ということのようでしたので、カードを手渡しました。そこでは何も問題なく使用が出来たのです。

なんか変だぞ?と気づき始めたのは、「ロンドンに到着したけどOystar Cardが買えなかった事案」の翌日、憧れのミュージシャンのライブを見られる当日の事でした。 せっかくロンドンに来たんだから少し観光でもしよう、まずはAbbey Road Studioかな?と、ホテルを出た私はぶらぶら歩いてビートルズファンの聖地に向かったのです。

これがAbbey Road Studiosだよおっかさん(*母はストーンズ派です)

途中で小さめの地下鉄の駅があったので、立ち寄ってみましたが、券売機に私のクレジットカードを入れても反応しないのです。操作が分からない。ここで最初に「?」と思いました。機械の調子が悪いのかな?(ポジティブ)

次に見つけたのも小さな駅でした。カードを差し込んでも情報を読み込んでくれません。なんだろうなぁ。最悪、現金で買ってもいいんだけど…。でも何かがおかしい…?(鈍い)

「誰かに聞けばいいのに」と思うでしょう。私もそう思います。でも聞けないんですよ。ネットで調べられる事であれば、ギリギリまで諦めずに検索したい。もちろん英語が話せないからというのが一番の理由なのですが、元々の性格というのもあります。あんまり人に話しかけたりしたくない。散々検索しましたが、「ロンドンの地下鉄駅で使えないクレジットカード」について、情報を見つけることが出来ませんでした。

3つ目の駅でもカードが使えず、「???」と思いながら、すっかり歩き疲れていたので、Oyster Cardはやむを得ず現金で購入することにしました。5ポンドのデポジットと30ポンドのチャージ。実はここでもまた問題が発生したのですが、それはまた別の話です。


石のお金?

その後買い物の際にカードを店員さんに渡す、読み取ろうとしても機械が反応せず、店員さんが怪訝そうに首を傾げてカードをしげしげと眺める、などの事態が連続発生。周りを観察して、鈍い私もさすがに問題を理解し始めました。


2019年の現在ではかなり日本でも状況が変わってきましたが、2017年当時、私の地元札幌では、カードを店員さんに渡した時の動作は、読み取り機械の横に設けられた細い溝にカードを滑らせて、カード裏の磁気情報を読み取ってくれる、というのがほとんどでした。ほとんど、というより私が知る限り100%その方式でした。

でもイギリスのカード読み取りは違いました。溝にカードを滑らせていない。周りから暗証番号の入力が見られないように小さな覆いのついた、手のひらサイズのテンキーのような端末です。ホテルのカードキーのように自分でカードを差し込んで、暗証番号を入力して決済するものです。最近日本でもよく見かけるようになりましたよね。


で、私のカードです。2枚ともICチップ、付いていません。恐る恐るカード会社のサイトを見ると「2018年から新しいカードに切り替えの際、順次ICチップ付きのものをお送りします」と記載があります。

…遅いんじゃー!!!!!

つまり「原始人の日本人が現代のイギリスに石のお金持ってきちゃった、てへっ(はーと)」ということのようです。そりゃ使えませんよね…。どうやらスキミング対策のため、EUでは何年も前にクレジットカードにICチップを搭載することが義務化されていたみたいです。なるほど〜。この旅では、使える場所ではカードを使い、あとは現金を大切に使っていくしかありません。


まだIC無しのクレジットカードが使えるところもある

問題を自覚した時に最初に心配したのは、鉄道のチケットのことでした。日本からオンラインで予約していた全ての乗車券と指定券を、指定した駅の機械で自ら発券する必要があり、それには決済時に使ったクレジットカードが必要だと記載されていたからです。

ドキドキしながら指定した鉄道駅に行ってみると、幸い発券機はICチップなしのクレジットカードにも対応していました。良かった!もし使えなかったら、窓口に行ってこのややこしい事態を英語で説明しなければなりません。もしくは予約していたチケットを全て諦めて買い直さなければなりません。本当にホッとしました。


この旅の間、石で出来た私の原始的なクレジットカードをあちこちで差し出してみました。ホテルのフロントは全て使用OKでした。それとハロッズ。高級デパートのハロッズは大丈夫ですよ皆さん!おもちゃ売り場でクマのぬいぐるみを買って、恐る恐る「このカードは使えますか?」と差し出してみたところ、素敵なお姉さんが「もちろんですわ、マダム」とニッコリ微笑んで、円建てにするかポンド建てにするか聞いてくれました。さすがハロッズ。大好きハロッズ。いつかあそこのデパ地下のオシャレなイートインで何かを食べるのが夢ですが、たぶん一生無理かな。

イギリスにライブを見に行くたびに、好きなミュージシャンの身代わりとしてクマをひとり連れ帰るという風習があります 。10体ぐらい貯まったら本人と交換して貰えないでしょうか。ダメですか。

帰国ののち、持っていたカードの片方を即効解約し、ICチップのついた新しいカードを入手しました。以降、イギリスではどこに行っても自信を持ってカードを使っています。そして普段から使ってないと常識についていけないなと殊勝に反省し、今では日本でもほとんどの支払いを電子マネーとクレジットカードで行っています。原始人から現代人へ。石のお金から電子マネーへ。進化を遂げた私とクレジットカードのお話でした。


英語事始


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私と英語

私の過去の英語経験?については、取り立ててお話するような事は何もなく、学生時代、特に得意だった記憶も無ければ、特別苦手だったという記憶もありません。大学時代は恐らく一般の文系学部より多少は多めの英語関連の単位を取る必要がありましたが(といっても英語の専門学部などではありません)、それで苦労をしたということもありませんでした。


イギリス旅行に英語は必要か

とにかくイギリス旅行には英会話が必要…

と思われがちですが、実は、日本で必要な手配をして、ライブを見に行って帰ってくるだけなら、ほとんど英語を話さなくても何とかなると思います。実際、何とかなりました。

便利な世の中です。英語で書かれたWEBサイトで色々準備をする必要がありますが、 イギリスに限っていえば、 クレジットカードと辞書や翻訳サイトを使えば大概の事は何とかなります。つまり「ネット上の英文がそこそこ読めれば」、飛行機、宿、鉄道の乗車券と指定券、ライブチケット、全てオンラインで手配が可能なのです。

よほどコミュニケーション能力が高くて度胸がある方なら別ですが、冷や汗をかきながら現地でネイティブの方と英語で会話を試みるよりは、事前に念入りに準備をしていったほうがずっと楽だと思います。

ただし、最低限の人的接触は避けられません。ホテルや飛行機のチェックインで毎回緊張し、困ったことがあった時に誰かに声をかけるのにかなりの勇気を要し、スーパーで買い物するのにレジの順番が近づいてきただけでドキドキし、 恐ろしくて飲食店にはほとんど入ったことが無い、という状況のままで、これからも旅を続けたいのかといわれると、それなりに辛い。やはり少しは英語の勉強を頑張ったほうが旅行は楽になるとは思います。


私の英語学習のモチベーション

実は「少しは英語を勉強したほうが楽になる」…というのは、個人的な気持ちとしてはちょっぴりウソです。

正直言って「切実に」英会話の必要性を感じています。

ライブを見るために初めてひとりでイギリスに行った際、英語力の必要性を痛感して帰ってきました。

一番の問題は、ライブ中にステージでミュージシャンが話しているMCの内容が全く分からない!そして運良くミュージシャンの皆さんに直接会う機会があっても、何も話せないことです!

最前列でライブを見てても、何を言ってるのか全然分からないのです

ライブの曲間にミュージシャンがステージで何かジョークを言って、オーディエンスが爆笑したりして、みんな楽しそうなんですよとても。時には客席とステージで会話したりして。それを聞いてみんながまた笑ったりして。それが私だけ全然分からない。みんないいなぁ、楽しそうだなぁ、と思います。

そしてライブ後に運良くご本人に会えたとします。サインプリーズ?といえばサインしてくれるし、フォト?プリーズ ?って言えば一緒に写真を撮ってくれますよ、そりゃ。ろくに英語も話せないのにイギリスまで自分たちのライブを見に来てくれたファンを、邪険に扱うミュージシャンは恐らくそんなに多くはありません。

でもそうじゃないんですよ!もっと色々言いたいんです。自分が日本から見に来たこととか、今日のライブも最高でしたとか、日本でも沢山のファンがあなたを待ってますとか、色々伝えたい事があるわけです!

それに英語が分からないままでは、ラジオやYoutube、ポッドキャストでインタビューを聞いても、この先ずっと「良い声だな〜」としか思えないということになります。もしかしたら重要な発表をしているかもしれないのに!

さらにいうと、万が一異世界にワープして、大好きなミュージシャンとアフタヌーンティーをご一緒するような事件が起きたらどうしたらいいんでしょうか(妄想)。何も会話が出来ない。これは由々しき問題です。 会話してる時にGoogle翻訳を立ち上げてそこに音声入力してもらってそれを日本語に翻訳するのはマヌケのひと言です。全然楽しくない。そんな事では2度目のアフタヌーンティーのお誘いは来ないでしょう(妄想)。切実です。


私の英語レベル

さて、英語の話です。私が一番最後にお金を払って試験らしきものを受けたのは25年ほど前でしょうか。当時、多分TOEICで600点ぐらい、TOEFLで500点ぐらい、英検は最後に取ったのが2級だったような気がします。恐らくその頃が私の英語試験の点数のピークだったと思いますが、その時でさえ英語での会話はほとんどできませんでした。(昔は試験にスピーキングセクションなどというものは無かったのです。)

そして2017年、イギリスまでライブを見に行こうと決心した時の私の英語の状況は、下記のようなものでした。

・20年以上英語の試験を受けていない。
・公私共に英語を読み書きする機会も必要も無い。
・20年以上外国人にもかかわりは全く無い。英語で道を聞かれる機会すら無い。
・パスポートはとっくに切れており、最後に海外に行ったのは15年ぐらい前(観光旅行)。

これは正直言って旅行にも事欠くレベルです。英語が全く口から出てこない状態。 誇張ではなく、サンキューとハローぐらいしか言えないし、当然現地のイギリス人が話しているスピードの英語は、言葉ではなく、ほとんどただの音にしか聞こえません。


私が必要とする英語

私に必要なのはTOEICでも英検でもIELTSでもありません。 私の職場では昇進するのに TOEIC のハイスコアが必要な仕組みなどありませんし、そもそもその気も無い。外資系企業に勤める気も無いし、留学する訳ではないし、今更アカデミックな世界に行きたい訳でもありません。英文学を原書で読みたいとか、映画やドラマを字幕無しで見たいとか、そんな大それたことは全然考えていません。

私の英語学習の目標は、イギリス旅行中に出会う人々が何を言っているのか分かるようになること。自分で言いたいことが言えること。そして現地で飲食店に気軽に入れるようになることです。

考え方によっては試験で高得点を取るよりも難しいこの課題に2017年から取り組んだり諦めたり、また取り組んだりしています。昔以上にポンコツになった頭で、ほとんどゼロからやり直しの英語学習が続いています。


おまけ

落語家の柳家小三治さんが50歳ぐらいの時に一念発起してアメリカに3週間の語学留学をした時の話。

小三治さんが現地の語学学校になんとかひとりでたどり着いてみると、どういうわけか既にコースが始まっており、 受付の人がどうやら途中参加は許可できないというような事を言っている(らしい)。そして入学の手続きをしてくれない…。

「最終学歴は予備校中退、英語の最終学歴は中学二年生」の小三治さんが、涙目になりながらどうやってそれを乗り切ったか。

少し長いですが*、英語が出来ない人間として本当に、心から気持ちが分かるし、いつもの事ながら面白すぎます。小三治さん、私も英語の勉強頑張ります!

*長いですが音声のみなので、家事などしながら気軽に楽しめると思います。


Introduction 初めてのイギリス


初めてのロンドン・ヒースロー空港

2017年9月。少し暗くなり始めたロンドン・ヒースロー空港のターミナル5にひとりで降りたった私は、いきなり途方に暮れていました。

世界でもかなり厳しい水準といわれている入国審査を無事に通り、地下鉄駅でOyster Card(日本でいうSUICAやPASMO)を購入し、その日泊まるロンドン市内のホテルまで移動してチェックインする。 初日の私のミッションはこれだけです。

ターミナル5に到着したという事は、つまりBRITISH AIRWAYSに乗ったということです。

Oyser Cardが売り切れ?!

ところが「Sightseeing!」の連発と日本人お得意のオリエンタルスマイルで入国審査を突破し、地下鉄駅にたどり着き、券売機の前に立つと…なんと全マシン Oyster Cardが売り切れ!(多分)今到着したばかりと思われる家族連れも困ってウロウロしています。駅なのに売り切れって何?無いわー、本当に無いわーと思いましたが、他にマシンも見当たりません。英語が話せないので誰かに聞くのは最終手段です。

ほかに買うところは?キヨスク的なお店でも買えると読んだような?でも近くにお店も見当たらず。空港まで戻る?やっぱりこの券売機で何とかならないかな?と、恐らく5分ぐらい逡巡していたでしょうか。(体感的には15分ぐらいに感じられましたが)


救いの神降臨

するとそこにダークスーツを着たビジネスマンが颯爽と登場したのです。気が付いたら急に目の前に。「これ、今日の地下鉄一日券。僕はもう使わないから君にあげるよ。今日一日しか使えないよ。それじゃ!(英語)」的なことを早口で言って(多分)、「さ、さ、さんきゅー!」という言葉に、映画のように後姿で片手を挙げて応え、その人は早足で空港の方に去って行ったのでした。

何を言っていたのかよく分かりませんでしたが、とにかくその日の日付のone day ticketをくれた*ので、概ね上記のようなことを言っていたに違いありません。黒い髪がクルクルしていてスマートで小柄で、どちら様か分からないけどカッコいい!もしかして亡くなったおじいちゃんか誰かが化けて出てくれたのかもしれません。

*もちろんこれはキセルの一種です。本来やってはいけない事ですが、追い詰められていた心情をお察しください。

とにかくあなたは神だ!もしくは神が私に遣わした何かだ!今日はこれをありがたく使わせてもらってホテルまで行き、そして明日ホテル近くの駅でOyster Cardを買おう。ロンドンは良いところだ、みんな良い人だ(単細胞)。脳内にサイケなお花畑が広がりつつ、私は地下鉄に乗ってホテルに向かったのでした。


常識知らず

そして、このOyster Cardに端を発して明らかになった問題が、この初めての英国ひとり旅の間ずっと付きまとう事になることを、この時の私は知る由もないのです。無知というのは本当に恐ろしい。後になって振り返ってみると、自宅を出た時点でこの旅は私の「負け」でした。致命的なミスを犯し、それに気づかぬままイギリス入りしていたのです。

例えるなら「ええっ?!国際線の飛行機に乗り込む時に靴を脱がなきゃならないって話はウソだったのかい?(マスオさんの声)」 レベルの話です。 誰もそんなことを航空会社に問い合わせしてわざわざ確認したりしません。大概の人はそんなのウソだって知ってます。私以外は。

そもそも1週間も会社を休むだけでドキドキ… 休みがいただけないなら退職も…と上司を脅(略)

私は非常に心配性で、しかも英語が話せず、初めての海外ひとり旅、初めてのイギリスということで、事前の情報収集はそれなりにしていたつもりでした。イギリスに詳しかったり、海外ライブに慣れているフォロワーさんに、SNSを通じて多くのアドバイスもいただいていました。しかしどれほどネットで情報を下調べしていても、現地に行かなければ分からないことが当然ながら、相当沢山あります。

それに日本での「常識」についても、全て網羅しているかというと、やっぱりそうではないのです。私は日常の99%は半径5キロ圏内で過ごしているので、仕方がないのです。人間力が圧倒的に足りてない。わざわざ9,000キロも離れたところまでひとりで旅をして、一番身近であるはずのダメな自分を再発見して帰ってくるという情けないお話です。そういうのは出来れば自宅周辺で発見しておきたい。自宅周辺が無理ならせめて国内で。

という訳で、私の旅には、旅慣れた方から見るときっと鼻で笑ってしまうようなことが沢山起こります。そういう方には笑って欲しいですし、そうでない方には笑いながら(読んでおいて良かった・・・)と心の中でこっそり思っていただければ幸いです。