とあるイギリスのミュージシャンファンの「レコード・ストア・デイ」雑感

みんな、欲しいものは欲しいと声を上げようもっと!問い合わせをガンガンするのですもっともっと!


Photo by Eric Krull on Unsplash

レコードストアデイというイベントがあります。Wikipediaによると「独立系レコードショップの文化を讃える日」ということで、 2008年にアメリカで始まり、その後ヨーロッパにも広がったらしい。 今やこの日はレコードファン、アーティスト、レコード店が一丸となってのお祭りとなっています。

地域に根付いている小さなレコードショップを支援するため、 アーティストやレーベルはこのイベント限定で店頭でないと入手が出来ないレコードをリリースして参加レコード店に卸します。 ネットでイギリスの状況を見ていると、レアなレコードを入手するため、前日夜や当日早朝から店頭に並ぶレコードファンも少なくない様子です*。

*そのため転売屋が暗躍して、ebayなどは価格高騰で大変なことになっていて、イベント自体が転売を生んでいるとして批判を浴びていたりするけどそれはまた別のお話。

私がレコードストアデイの存在を知ったのはここ4年ほどの事。イギリスで発売される限定レコードの中に目当てのアーティストのものがあることを知り、どうやったら入手できるのか?と思い調べた結果です。


resident musicは素敵なお店

何も知らない私はまず、イギリスのresident musicに問い合わせのメールを入れました。一度そのお店から取り寄せした事があったんですよね。その時商品と一緒に入っていた納品書を何気なく見たら、ボールペンで小さくThank You! と手書きのメッセージが書いてあって、とても嬉しくて、いいお店だなと思っていたのです。ちょっとした事なんだけど、なかなか出来ないことだなと。もしかしたら日本からの注文が珍しかったのかな。

で、追っかけでその街に行った時に実際にお店に立ち寄ってみたのです。想像していた以上に良いお店でした。車が入れない狭い路地の中にあって、明るくて、オシャレで可愛くて、でも適度に入りやすくて。ぶらぶら店内を見ていたらなんだか聞き覚えのある曲が流れてきて…なんだっけこの曲?

しばらく考えてようやく思い当たりました。宮沢賢治が作詞作曲した「星めぐりの歌」だ!♪あかーいめだまのさーそりーってやつです。まさかイギリスの地方のレコードショップで宮沢賢治を聞くとは。海外で突然耳に飛び込んできた懐かしいメロディはインパクト大でした。思わずレコードショップのオリジナルグッズ買っちゃうくらい。


2018年のレコードストアデイ

そんなこんなで、とにかく良いお店だと思っていたので、思い切ってメールで問い合わせをしてみたのです。2018年の事です。日本に住んでるんですけどレコードストアデイ限定のMansunのWide Open Space 12″がどおおおおおしても欲しいいいいいんです、取り寄せ可能ですか?と。すぐに丁寧な返信がありました。

レコードストアデイの限定レコードは予約不可、とり置き不可、店頭販売に限られていること。店頭販売後に残った商品についてのみ、1週間後の現地時間0時にオンライン販売が許可されること。自分達の店での取り扱いがどうなるかは売れ行き次第だから今は何ともいえないけれど、 Kscope(現在Mansun作品の版権を持っているレコード会社)の商品を取り扱っている良い店がいくつかあるよと、なんと他のレコード店のオンラインショップurlまでいくつか教えてくれたのです。

Google翻訳を通してのやりとりですが、とても親切な事は私でも分かる!感動してしまったので、お礼と共に、実は店舗を訪れたことがあること、宮沢賢治が流れてびっくりしたことなどを書いて送ると、60年代~70年代の日本のフォークが大好きなスタッフがいてね~岡林信康が~などとまたノリノリの返信で、次に店に来た時には絶対声かけてね!と、とことんフレンドリー。そしてなんと解禁の半日ほど前にわざわざ「うちでもオンラインでMansunが販売出来そう!頑張ってゲットして!」と知らせてくれ、無事に入手することが出来たのでした。なんて良いお店!


2019年のレコードストアデイ

そして翌年2019年。またやってきましたレコードストアデイ。今年はMansunの名曲LEGACYの12″です。入手できるか出来ないか不安なので嬉しいような、もうやめて欲しいような複雑な気持ち。。。首都圏に住んでいる方などの様子を見ても、昨年は日本のレコード店でMansunの限定版を取り扱った気配はなさそうでした(確証はない)。ただ、Mansunのリイシュー版を出しているKscopeが日本のPR会社や独立系レコード会社と提携を結んだ様子があり、状況は少し変わっています。もしかしたら2019年の限定品は日本でも流通するのでは?というわずかな期待がありました。しかしネットで見る範囲では何も情報がありません。果たして日本での流通はあるのか?

期待も込めて日本国内で「レコードストアデイ参加店、オンラインショップを持っている大きめの独立系レコード店」に問い合わせのメールを入れてみました。1軒目、返信無し。2軒目、返信無し。3軒目、返信無し・・・と思っていたらとあるショップから日程ギリギリになって「入荷は未定です*」というクソみたいな有益な情報が2行ぐらいの短いメールで返ってきました。

*入荷しないならしないと言って欲しいし、この返信だと調べたのか調べてないのかも不明。返信しないのと同じどころか、むしろマイナスなのでは?いや、でもやっぱり無視よりはマシか・・・?

結局日本国内で取り扱いがあるのかどうかは不明。当日大手のレコードチェーン店に行ってみましたが、取り扱いは無く、ネットで他のファンの方の様子を見ていても店頭に出ている様子はありません。よーしイギリスからオンラインで取り寄せだ!

という訳で、解禁時間にresident musicのサイトで待ち構えておりましたが、スタートしてすぐにショップがダウン、次につながった時には売り切れていました(泣)。しかし前年にresident musicのスタッフの方に教えて貰った他のショップでトライして何とか購入することに成功*したのです。

*その後「パッケージのビニール部分が破損して納品された。このまますぐ送る事も出来るし、新しいパッケージが届いてから送る事も出来るけどどうする?」と連絡が来て、結局届いたのは6月になったのでした。でも入手できただけで大満足!イギリス国外に住んでいる場合は、どうせ当日のお祭り(お目当ての商品が買えた!というファンの報告で当日のFacebookやTwitterはお祭り状態になります)には乗れないんだし。


2020年のレコードストアデイ

そして2020年です。コロナの影響で何度か開催が延期され、最終的に特例だらけの開催になった2020年。レコード店に人が来て欲しい、でも沢山押し寄せたら困るというジレンマの中、1)限定版の販売を3日程に分ける。2)オンラインでの販売を当日夕方から(日本では午後から)認める、という特別ルールが設けられました。

そして2020年のレコードストアデイ、Mansunはかねてからその存在が知られていたのに実際にはリリースされなかった幻のアルバム「The Dead Flowers Reject」を出すと発表されていたのです。これは競争が激しい。そして今年は日本の販売元からプレスリリースが出ていたので、日本国内での流通もありそうな雰囲気。しかしいくら検索してもネット上にプレスリリース以外の情報が出てこない。うーん。

ギリギリまで情報を捜し求めていましたが、あまりにも何も無いので、発売日の1週間ほど前にリリースの配信元に問い合わせのメールを入れてみました。するとメールを転送してくれたらしく、レコードの販売元の担当の方から丁寧なメールが返って来たのです。

曰く、Mansunの今回の限定アルバムについては日本国内のレコードショップ店頭/オンライン販売の予定は無いが、入手希望なら本国に問い合わせて、在庫があれば私が住んでいる街の大手レコード店に納品するよう取り計らう、とのこと。とても親切です!

しかし自分の入手だけなら例年通りイギリスから取り寄せれば済む事。私ひとりの為にお手を煩わせるのは申し訳ないので、その方を通じての取り寄せは遠慮して、全国に欲しがっているファンが少なくとも何人かは居るのです、という旨をお伝えたところ、レコード店の店頭で言ってくれれば自分の所に問い合わせが来る事になっているので、まとめてイギリスに在庫を確認して、在庫があれば取り寄せをする、という事でした。

そんな経緯を他のファンの方にもお伝えして迎えた当日。ある方が某レコード店を訪れ、店頭でMansunのレコードについて問い合わせをしてみたそうです。レコード店の店員の答えは「ありません」だったとの事。事情を説明して販売元に問い合わせて欲しいとお願いしたけど、動いてくれなかったそうです。

今年も国内での入手は無理なのか・・・と諦めかけた解禁時間(日本時間1時)。大手レコード店のオンラインストアでなんと予約が開始されました!ありがたく、大急ぎで予約を入れました。もしかしたらメールをやり取りしていた販売元の担当の方が手を回してくれたのかもしれません。ありがたい!しかし発売から1ヶ月以上。毎日悶々としながら待ち構えていたところに飛び込んできたメールは無情にも「取り寄せ期間終了のため、勝手ながらキャンセルさせていただきます」。ああ…。

Twitterを見ている限り、入手出来た日本人は見かけませんでした。恐らく全キャンセル。この時は慌ててイギリスのショップから探し出して何とか購入出来ましたが、数が限定されているので、完売になっていた可能性も充分あります。購入のチャンスを完全に逸する可能性もあった訳です。 イギリス側の対応が悪かったのかもしれないし、どういういきさつがあったのかは想像するしかありませんが、少なくとも絶対に入手したい時にはこのルートはあてにできないと判断せざるを得ません。


一方で、ファンとしては出来れば日本での販売実績を作りたいのです。日本のファンでもそれなりに買う人がいると分かれば、取り扱いしてくれる店も出てくるはずです。そうなれば買う予定が無かったのに「あ、コレも出てるんだ。買ってみようかな」と思う人も出てくる可能性があります。

買いやすい環境があれば買いたい、でも海外から取り寄せまではしたくない…というファンは潜在的に相当数いると思っています。日本のファンに商品を届けたいアーティスト/販売側と、もう少し買い易ければ欲しいのにと思っているファンを結びつけることが出来れば、もっとみんな幸せになれるはず。この一連の動きこの先の状況改善に繋がる事を願ってやみません。


とにかく最終的に何が言いたいかっていうと、わずか4年間(4回)のレコードストアデイ経験ですが、それほど有名じゃない洋楽アーティストの商品については、イギリスのレコードショップ>>>日本の流通元>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>日本のレコードショップの順に熱意があるんだなということです。


思い起こせば思い当たるエピソードは他にもあります。ロンドンの某有名レコード店の店員さんに、ほぼ入手困難であろうレコードの事を聞いた時。私のたどたどしい英語にもにこやかに応対して「うーん、多分それはもう在庫ないんじゃないかと思うけど・・・ちょっと待ってね、探してみるから」とワザワザ手を止めてPCと実際の棚で商品を探してくれ、やはりものが無くて「ごめんね、無いみたい。うちに無いって事は多分ほかでも難しいと思うよ。」という、本当に優しい対応です。

一方、日本の大手レコード店。ある時オンラインで「え?この商品日本にも入ってるの?」と思うようなレコードを見つけ、半信半疑で予約をして店頭引取りにしたところ、店頭に届いていたのはなんとCD。CDではなくレコードをオーダーしたつもりだったのですがと予約履歴を見せながら申し出ると、色々調べて、オンラインショップの登録カテゴリが間違っていたとの事。特に謝罪の様子もなく(彼にしてみればオンラインショップの登録が間違ってたのは自分のせいではないってことなのでしょう)再度取り寄せますかーと。お願いしますというと、ネットを検索して「あー、Amazonに在庫があるみたいなので、こっちの方が多分早いですね~」。親切といえば親切ではあります。でも多分面倒なんだろうなと思い、結局キャンセルしてしまいました。


自分も客商売(直接客前に立つことは無いにしろ)なので本当に色々考えさせられます。多分これはレコード店だけの問題じゃないんだろうな。日本のレコードショップはもっと頑張ってといいたい気持ちもありますが、買い手の熱意の問題でもあるのかなと。

みんな、欲しいものは欲しいと声を上げようもっと!問い合わせをガンガンするのですもっともっと!


あと、 もうひとつ言いたいのは海外から買い物をするのを怖がっている人が結構居るんですが、案外というか、みんなかなり親切だよ!(場合によっては日本よりも)という事です。 私も海外通販は日本よりは若干の緊張感が漂うんですけど、でも今のところ嫌な思いをした事はほとんど無いし*、間違って購入してカード切ってからキャンセルしたりした事もありますが、要点と希望を伝えれば(翻訳サイト大活躍)特に問題は発生しませんでした。運が良かったのかもしれませんが・・・。

*もちろんゼロではありません。電車の中や電車に関する問い合わせ(電車ばっかりやん)で「お?やんのかイギリス人?日英開戦するか?こっちは日本から来た忍者だぞ?(嘘)」といいたくなるようなお方にも2度ほど遭遇したことはあります。


イングランドの小さな町で、今度こそ本当に野宿かなと覚悟した時の話

2018年11月のアコースティックツアーの際、チェスターで野宿しかけた話は以前書きましたが、実はこの旅ではもうひとつ、大きな危機がありました。


Stockton-on Teesはこの辺。

ツアーの千秋楽は難易度が高い

2018年11月のアコースティックツアーの際、チェスターで野宿しかけた話は以前書きましたが、実はこの旅ではもうひとつ、大きな危機がありました。

そもそもツアー自体が4日間でヨーク→アバディーン→エディンバラ→ストックトン=オン=ティーズを移動するという、無茶な日程だったのです。あまりに長距離移動なため、一部飛行機の利用も検討したのですが、調べてみるとほとんど時間短縮にならない上、費用も大きく変わらないことが分かったので、結局全て鉄道を使う事にしたのでした。

とにかく連続全4日間のツアーの追っかけです。英国名物「鉄道遅延」で予定の乗り換えに失敗したりしつつ(指定席のお金返してプリーズ)、3日間の移動をなんとかこなし(ほとんど観光なんてする暇も元気もなく)、いよいよ最終日のストックトンを迎えました。みなさん知ってますかストックトンを。

・ヨーク→名前知ってるー!大聖堂で有名ですよね。

・アバディーン→名前聞いたことあるある。調べたら思ったより北にあってびっくりしたけど。イングランドじゃなくてスコットランドかー。

・エディンバラ→知ってる知ってる!世界遺産?!

・ストックトン=オン=ティーズ→???

ストックトン=オン=ティーズ。私は初めて聞いた地名でした。もうね、最初から危険な香りがしてたんですよ。人口8万人。曰くイングランドで最も平均寿命が短い街(ネットの記事によると町の経済不況と飲酒習慣が原因と目されているとの事)。ライブ会場の徒歩圏で「ホテル」と名のつく施設は満室。何度チェックしてもキャルセルが出て来る気配はありません。


ツアーで地方にも来てくれるありがたみ

ここでちょっと別のお話。なんでツアーで毎度こんなに大変な思いをするかというと、それは自分の見たいライブが小さい町で開催されるからです。大きな町でもやってるんですよ。ロンドンとかバーミンガムとか。だけど同じぐらい小さい町での開催も多いのです。これには多分理由があって、私が追いかけているアーティスト様の若かりし頃、バンド時代まで遡ります。

プロになることを夢見て、地元のチェスターではなくわざわざスカウトが出入りしているリヴァプールのスタジオまで遠征してリハーサルを重ねていたこのバンドは、一度もライブ経験のないまま、目論見通りにスカウトされ、レコード会社とサインすることになります。アイドルみたいだなと思ってしまいますが、意外とそういう事ってあるんですね。

で、ライブです。ご本人たちは未経験だし人前で演奏するなんて恥ずかしいし緊張するしで、かなり苦手意識が強かったようですが(最初期の映像を見ると、目深に帽子かぶったりしてますね*)、しかしロックバンドとしてライブは避けられないということも分かっていたのでしょう。怒涛のツアーを行うことになるわけです。とにかく小さな町の小さな会場までツアーで周り続けた結果、デビューからわずか2年で、雑誌の読者アンケートで年間ベストライブバンドの称号を受けることになります。偉い!そういうところは真面目!

*シャイすぎてステージに立つどころか、歌詞を書くのも恥ずかしかったため、1stアルバムがあんな内容になったという説も。

小さな町でライブを行った際、地元の人から「君たちが来るのをずっと待っていた。この町でライブをしてくれたのはThe Clash以来、君たちが初めてだ!」と言われたという逸話を何処かで読んだ記憶があります。1990年代半ば~後半の話ですから、多分その町では10年ぶりぐらいのライブだったんでしょうね。そりゃすごい。

このバンドは解散から20年近くなる今でも熱狂的なファンがいることで知られています。様々なメディアで「無茶苦茶ファンが固い」バンドとして紹介されているのを何度も見ています。音楽メディアや他のバンドのファンからは感心されているというか、呆れられているというか、ドン引きされているというか。

解散してしまったにも関わらずバンドのファンイベントが開催され、世界中から数百人ものファンを集められる*バンドは他になかなかいないでしょう。正確に言うと「イベント?開催されれば喜んで行くよ!」というファンは世の中いくらでもいると思いますが、それを主催するモチベーションと実行力を兼ね備えたファンチームを抱え続けていることが「すごい」のです。

*不定期ではありますが、このイベントはこれまでに4回開催され、最新の回でもまだ200人も集まってるらしい。

ご本人は独特かつ強固なファン層を作り上げたことについて「小さな町をツアーし続けたこと。差し出される全ての手と握手し続けたこと。」がその理由だと思うと分析しています。そして、おそらくそれを理解しているがために人口10万人にも満たない小さな町でもライブを続けているのです。今でも。ご自身も小さな町の出身で、音楽ファンにとって生で演奏に触れられることがどれほど貴重な事か、よく知っているというのもあるんでしょうね。ええ話や…。私自身、地元に来てくれる海外アーティストを見に行って何度感動した事か。遥か彼方にいる夢のような存在が身近に感じられて、世界が少しだけ小さくなったように感じたような気がします。

しかし。もちろんご本人が小さな町のライブで想定しているのは地元民。まさか極東の日本くんだりからわざわざイギリスまでやって来て小さい会場まで追いかけまわす酔狂なファンがいるとは思っていない事でしょう。
つまり、旅の苦労は自業自得やで!当たり前だけど!でも小さい会場のライブは無茶苦茶楽しいから仕方ない!


宿が無いのよ、宿が

とにかく、会場最寄りの空きのあるホテルは車で20分以上かかり、確かUberも調べたんですが当時はサービスエリア外っぽかったのです。ライブが終わった後にバス?流しのタクシー?いやいやいや無理でしょう。路頭に迷うのが目に浮かぶ。

やっとの事で見つけたのは会場から徒歩15分程のAirbnb的な宿で、1泊素泊まり約3,500円。写真を見る限り、イギリスでよく見かけるテラスハウスの一室です。明らかに素人が撮ったと思われる写真が怖い。青白い蛍光灯に照らされた寒々しい殺風景な部屋…。まずはそこを予約でおさえて、他に良い方法がないかギリギリまで模索し続けました。

イギリス人のフォロワーさんが、少し離れたところにある、見るからに居心地の良さそうな、ヒラヒラした感じの(ベッドに天蓋が付いてた)ガーリーなAirbnbを見つけてくれて、こっちにしなさい!当日タクシー手配してあげるから!とまで言ってくれたりもしましたが、連泊でなきゃ受け付けてくれなかったりで、結局ボツに。

ツアー最終日を見たいなら、もう覚悟を決めて泊まるしかない!寒々しい3,500円素泊まり共同シャワー&共同トイレ!幸いなことに土壇場になってから同じ宿の少しいいお部屋に空きが出て、専用シャワーと専用トイレ付きの部屋に予約を変更することができました。それでも確か5,000円くらいだったような。安い宿、怖い。


まずはたどり着かなきゃしょうがない

世界の鉄道ファンの皆さん、ここが鉄道発祥の地「ダーリントン」です!

宿の難しさもさることながら、交通の便の悪さもストックトンの魅力の一つです(何)。前日のエディンバラから ストックトン=オン=ティーズまでは1時間半ほど鉄道を使い、別のローカルの鉄道に乗り換え、ダーリントンで下車。さらにそこからバスで30分ほどの道のり。今思えばもっとエディンバラ寄りのところでローカル線に乗り換えれば町まで直接鉄道で入れたんですよね。乗り換え無茶苦茶多くてそれはそれで怖いけど。

鉄道は…大体何とかなるのです。真剣に検索を重ねれば細かい情報がある。問題はバス、バスですよ。どれだけ検索してもバスについてはネット上に情報が少ないんですよね。観光地でもないような場所は特に。こういう場所ではGoogleマップ一神教徒になるしかない。

この時もやっとたどり着いた無人の鉄道駅から停留所を探してウロウロし、多分ここ?かな?と思われるところでバスを待っておりました。確かこの時点で15時過ぎくらい。宿には16時頃着くと連絡を入れていたので、程よい頃合いでしょう。

若干の心配は前日に「16時前後にそちらに着くので宜しく」とメールをしても返事が無かったことです。しかし数日前に「そちらにはドライヤーがありますか?」と問い合わせをした時には「ありますよー!当日お待ちしてますね♪」と普通に返事が来たし、大丈夫でしょう!多分!(もっと心配しなさい)

当たり前なんですけど、この辺まで来るとバス停には地元民しか居ないんですよ。しかもお年寄りばかり。自分で言うのもなんだけど無茶苦茶浮いてる。明らかに観光目的で来るようなところじゃない。でもそこは礼儀正しい(?)イギリス人、みんな多分内心「何だろうこの人」と思ってるんでしょうけど、完全に空気扱いです。

知らない町でバスに乗る心細さたるや(ドキドキしながらバスを待ってる時の写真)

地方のバスの難しさよ

そんな状況で10分くらい待った後でしょうか。定刻通りにバスがやって来たんですが、よく見ると私が乗りたいバスと番号が微妙に違う。49に乗りたかったのに、やって来たのは48Xとかそんな感じ。このバスの後に別のバスが来るのかな?んんん?などと迷っていたら、待っていたお年寄りの皆さんが「ちょっと運転手さん、このバスは49じゃないのかい?(想像)」と大声でドライバーに質問しています。なるほどこの辺はそういうアクセントなのか。そしてまさしくそれは私が聞きたかった質問…どうやら48Xでスタートして途中で49に番号が変わるトリッキーな仕様のようです(想像*)。

*冷静に思い返すとどうしてこういう英語が聞き取れてるのか(もしくは聞き取れてると思う事自体が勘違いなのか。)我ながら謎なのですが、危機に陥ると実力以上の能力が発揮されますね。火事場の馬鹿リスニング。(ちょっと空耳アワーっぽい)

心の中でおばちゃん達サンクス!と思いながらバスに乗り込み「ここの停留所まで行きたいんですが…」とスマホ画面に表示した宿の最寄りのバス停を運転手さんに見てもらいました。すると「うーん、分からんなぁ」…えっ!分からない?


イギリス人って

思えば地元のお客さんしか乗ってないから仕方ないんですが、運転手さんはルートは分かってもバス停の名前なんて覚えちゃいないわけです。アナウンスは自動音声だし。するとバスの車内にいたお年寄り達が一斉に「多分○×を超えたところのあそこだよ」「そうそう、何とかの近くのほら、あそこあそこ!」などと口々に大声で運転手さんに怒鳴ってくれました。いやーみんな親切。運転手さんにお金を支払ってバス車内の皆さんにペコリと頭を下げてお礼を申し上げ、バスは無事に走り出しました。なんかもうこの辺でちょっと安心したんですよね。大間違いでしたけど。

最初は住宅街を縫うようにゆっくり走っていたバスは、途中で高速道路のようなところに入り、スピードを一気に上げて進んでいきます。え?こんなに遠く?と思うくらいの長距離を容赦なく進んでいくバス。Googleマップで見ていると進んでいる方角は間違いない。しかしどんどん人里から離れていくと同時に増していく心細さよ…

30分ほど猛スピードで走ると景色が徐々に住宅地になっていき、いよいよ目当てのバス停に近づいてきました。私の前に座っていた花柄のワンピースを着た女性が振り返って(多分70歳ぐらい?)次だよ!と声をかけてくれます。優しいなぁ。で、私がバス降りたら何故かその人も一緒に降りて来て、あっちにスーパーがあって、こっち方向が駅でと、何やら説明をしてくれています。どんだけ親切!(アクセントが強くて早口でなに言ってるか全く分からない)とにかく本当にありがとうございます!とお礼を言って別れました。もーハグしたいぐらいだよ!


ついに宿に…着いた?

バス停から宿までは徒歩5分程度のはず。寂れた街にありがちな大きめの幹線道路、ひと気はありません。冷たい雨が降ってるし、11月のイギリスは日が暮れるのが早くて、暗くなって来る時間帯。早く宿に入って、少し休んでから会場の下見ついでに何か食べ物を仕入れてこないと。完全に暗くなってから道に迷うの嫌だし。

幹線道路から一本入ったタウンハウスは事前に宿の紹介で見ていた写真と同じ。同じ外観の建物が連なっている中、宿の番地を確かめながら進むと、かなり奥の様子。玄関周りに壊れた家具が放置している家もあって、雑然とした雰囲気です。そんな中で目当ての番地を見つけました!Chesterと違って楽勝だ!

看板出すとかそういう事はしないですよねそうですよね。

しかしどこからどう見ても普通の住宅です。表札もサインもない。 間違って違う住宅をピンポンして、普通に住人が出てきたりしたら何と言っていいか分からない。アメリカなんかだといきなり射殺されちゃったり…?まさかそんなことはね。 かなり不安にかられながら玄関のブザーを鳴らしました。


「しーん」

はい、誰も出てこない。本当にありがとうございます。


もちろん何回か鳴らしましたよ。番地間違ってるのかなと思い周りの家も確認しました。しかし場所は間違いなさそうです。道を挟んで交互に番地が順に続いてる。こちら側が1、3、5で、道を挟んで向こうが2、4、6と規則的に並んでいます。だから番地は間違いなさそう。しかしそもそも家の中に人の気配がしないんですよ、電気もついてなさそうだし。何度かブザーを押しながら15分ほど待ってみたけど誰も出てこないし反応もない。3回くらい電話もしてみましたが、誰も出ない。ああ、だんだん日が暮れて来た…


どうしたらいいの?

【案1】ここでひたすら待つ?(でもいつまで?)

【案2】宿が確保できそうな、少し大きめの街まで戻る?(多分ここから1時間以上かかる)ライブが始まるのが大体4時間後なので見られない可能性が高い。いや、今すぐ決断して移動しながら予約して、チェックインしてから急いで戻ってくればギリ見られるか?いや、チェックインは後にしてこのままここにいてもいいのか?しかし荷物、荷物はどうする?ライブ後に交通機関動いてるのかな?宿までたどり着けるのか?やっぱり無理だろうか。明日には日本に帰るんだし、ライブを見られないならいっその事、このままロンドンまで行っちゃった方がいいかな?

【案3】ギリギリまで近隣の宿を当たって、最悪野宿も辞さない覚悟で後先考えずにライブだけは見る?(せめて雨さえ降ってなきゃなぁ…←降ってなかったとしたってどうするつもりなのか謎)


1から3の案を頭の中で5周くらい吟味しつつ、決断できないまま、どんどん暗くなる道端で小雨に降られながら更に15分、トータルで30分ほどを過ごしたでしょうか。時間は4時15分ぐらいかな。今頃会場ではリハーサルやってるのかなぁ。ライブは前座が終わって本人が登場するのが多分8時過ぎ。ここまで来て千秋楽のライブが見られないなんてむごすぎる。

でも決断しないとライブが見られない上に宿すらなく、立ち往生する可能性があります。どうしよう…今度こそ野宿か…どこか物陰のごみ箱の中とかなら夜中でも危険を避けられるだろうか…。真面目な話、寝袋…寝袋売ってるところってないかな?いや、寝袋買ってどうするつもりなんだ私?テントも買う?いやいや、そういう事じゃない。


イギリス人って~Part.2

そして無駄と思いつつ絶望的な気持ちで何度目かのドアベルを鳴らした時です。急に暗い家の中からドアがガチャガチャっと開いて、ニッコニコの小柄な若い女性が現れたのでした。

「ゴッメーーーーーン!掃除してて気づかなかった(ハート)マジゴメンねー!(みたいな感じの英語)」

イヤホントカンベンシテクダサイ…

あんた絶対今までヘッドフォンで大音響で音楽聞いて踊りながら掃除してたやろ!なんかそんな感じするもん!ファンキーだ!オーラが!ノリノリやん!そら玄関ブザーも電話も聞こえんはずだわ!(フレンドリーで明るくてとても感じのいい子だった)

こっちも「やだーもーマジ焦ったよ~!良かった~(ハート)」ぐらい言いたいんですが、私の英語力で言えるのは…

「の、ノープロブレム・・・(オリエンタルスマイル)」

いやー旅って本当にいいものですね!(白目)

何もなくてもとにかくお茶だけは充実の飲み放題。それがイギリスクオリティ。

大好きなミュージシャンのホームタウンまで行ってみた話(Part.1)


チェスター郊外へ

さて、2018年11月にチェスターに行って、予約していた宿の場所が見つからず、一瞬野宿を覚悟しかけた話は既に書きました。チェスターを訪問したのは、もちろんあのミュージシャンの故郷であり、あのバンドが結成された、ファンにとっての「聖地」だからです!

私としては折角ここまで来たからには、ご本人の住んでいた辺りまで行ってみたいわけです。次はいつチェスターまで来られるか分からないし。当然正確な住所までは知る由もありませんが、ご本人が育ったのと同じ風景を見てみたかったのです。

幸い、町の名前は明らかにされていますし、ご実家に帰られた際にインスタで「若い頃によく来ていた公園」や「昔眺めていた懐かしい景色」の写真をアップしていて、アタリはついています。ご興味のあるファンの方はインスタをさかのぼって見てみると簡単に発見できると思います。

その町はチェスター駅からは車で15分ぐらい。鉄道とバスを乗り継いで行くと約30分強というところでしょうか。比較的交通の便の悪い場所で、当然ながらごく普通の住宅街です。時間はあるし、ブリットレイルパスを持っているので鉄道は乗り放題だし、しかもご本人はツアー中で絶対にこの辺にはいない!のんびり行ってみようかなというノリで行ってみました。


イギリスの地方都市でバスに乗るということ

まずは鉄道です。お目当ての町までは、本数は少ないながら鉄道に乗ってたったの1駅。無人駅で降りて、歩いて5分ほどの停留所からバスに乗り換えて15分程だったかと思います。11月中旬だったという事もあり、寒くて寂しい道のりです。


それにしてもロンドン以外の場所で「バスに乗る」のってハードルが高い。行き先や乗るべきバスの番号はGoogle Mapがあれば何とかなりますが、支払いが難しいんですよね。全部ICカードが処理してくれれば一番簡単なんですが、現実は甘くない。国内旅行ですらバス利用は難易度が高いのに、言葉が話せない海外だとさらに心理的ハードルが高い。しかも私が地方でバスに乗るのは観光客が行くような場所じゃないのでなおさらです。


イギリスのバスは大抵は前乗り、中降り、運賃前払い形式のようです。もしかしたら例外があるのかもしれませんが、私の今までの経験では全部その形式です。地元の方はICカードでピッとやっていますが、その日しか滞在しない旅人は、現金で割高な運賃を払わざるを得ません。

バスが来たらバスの前から乗り込み、運転手さんに「〇×まで行きたいのですが、いくらですか?」と聞いて現金を支払い、レシートを貰うという手順が必要になります。


見知らぬ土地のバス停の名前なんて到底発音できる気がしないので、いつもスマホにGoogleMapのバス停リストを表示させ、それを運転手さんに見せて、指差しながら読み上げます。すると£2なり£4なり言われますので、現金で支払いを済ませます。手元に£5札を用意しておけば大体用が足りると思います。

あとは目的のバス停名がアナウンスされたら、日本と同じように自分の近くにあるボタンを押して「降ります」という意思表示をします。バスが停まったらバスの中ほどにあるドアから降りれば ‘Bob’s your uncle!’(いっちょあがり!) というわけです。

しかし大抵目当てのバス停に着いたら運転手さんが黙っていても止まってくれます。チェスター郊外に行ったこの時にも、ちょっと油断していて降りますボタンを押し損ねたのですが、運転手さんがちゃんとバスを止めて「ここだよ」と教えてくれて、慌てて下車しました。親切!ありがとう運転手さん!


この街の成り立ち

英語のWikipediaに掲載されているご本人の談によると、ここは第二次大戦後リヴァプールの80万人の人口の半分、約40万人が集団で移住した街との事。日本語のリヴァプールのWikipediaを見てみると、「1960年代から1970年代には大規模なスラム浄化と再建計画がはじまり、」という記載があるので、流れとしては間違いなさそうです。

古くから工業都市・港湾都市として知られていたリヴァプールは、大戦中にドイツ軍からの多数の空襲に晒されてたようで、 1990年代後半にリヴァプール大学に通っていたLuke先生も「自分が大学生の頃、まだそこかしこに爆撃されて破壊された建物跡の空き地があった」と話していました。

つまりざっくり言うと、ドイツ軍の爆撃で街はグチャグチャ、元々人が多すぎてスラム化して困ってたし、 戦争も終わったことだから再開発しちゃおう!人口多すぎるからどこかに大量に家を建ててそっちに半分ぐらい移動させればいいんじゃないかな?という大計画が実行されたんでしょうかね。

とにかく、建築家をされていた父上がこの地域の開発にかかわりがあり、自らが設計した家の中の一軒を家族のために購入し移り住んだ、という事だと、どこかで読んだようなおぼろげな記憶もあります。(曖昧) この街は行政区としてはイングランドではなく、ウェールズに当たりますが、上に述べたような経緯から、 住民の多くが元々はリヴァプールに住んでいたイングランド人のようです。


寒くて寂しい河川敷

私がバスを降りたその停留所の前には小さなお店が2軒並んでいて(後に調べたところ、Pubを併設したB&Bと家具屋さんでした)、お昼過ぎという時間帯のせいもあってか、ひと気は全くありません。幹線道路を挟んで反対側に進むと、川岸に向う道が見えてきます。


非常に冷たい風が吹いております

何かの修理工場、コンテナを改造して作られたカフェ、自然のままに放置されて草がボウボウと生えた空き地。冷たい風に晒されながらコンクリートで固められた川岸にたどり着くと、自転車を停めて川面を眺めるお年寄りがぽつんと彼方に見えるほかは、人影もありません。

脇を見ると英語とウェールズ語が併記されたこの川の案内看板があり「この川では少なくともローマ時代には既にサケ漁が行われており、現在では商業漁業は行われていないものの、規定の範囲内でのサケ釣りは認められている」旨の説明が、1975年頃に撮影されたサケ漁用のボートの写真に添えられています。写真に写る川の様子は今とは全く別の自然のままの河岸なので、どこかの段階でサケ漁が廃止され、その後護岸工事が行われたものと考えられます。


昔はこんな景色だったんですね。のどか。

さらっと「ローマ時代には~」などと書いてありますが、グレートブリテン島をローマ人が支配していたのは40年から410年頃。日本で卑弥呼が活躍していたのが242年~248年という事なので、本当にかなり「昔」ですね。しかしイギリスというところはロンドンにも地方都市にもローマ時代の遺構が沢山残されていて、「昔」がずいぶん身近に感じられるなぁといつも思います。


ご本人はここによく来て川の景色を眺めていたようなのですが、絶対11月じゃないし(いくらなんでも寒すぎ)、もしかしたら護岸工事がされる前で、もっと賑やかで自然がいっぱいだったのかもなぁ…などと思いながら暫く向こう岸にある巨大な送電線を眺めていました。

寒々しい景色も相まって、とにかく寒くて仕方が無いので、次の目的地の公園に向かうことにします。Google Mapによると歩いて20分以上かかりそうなのですが、いつ来るか分からない(しかも不安がいっぱいの)バスに乗るよりは、とゆっくりと歩き始めました。徐々に冷たい風に雨が混ざり始めて、寒い~!(続く)


インポッシブルなミッションを受けてChesterで野宿しそうになった話


3度目のイギリスは本当にひとり

2018年11月の旅のめあてはアコースティックツアー。3度目のイギリスです。実はそれまで2度のイギリス旅では、1会場を除く全てのライブ会場で別の日本人ファンの方とご一緒させていただいており、いざとなったら百戦錬磨のその方が居る という事が、ずっと私の心の支えになっていました。 世の中には日常的にイギリスまでライブを見に行く人もたくさんいるのです…。すごいなぁ。

しかし3回目のイギリス旅、心の支えのその方は行かないという事だったので、ついに完全に私ひとりで旅する事になったのです。

今回私がライブチケットを取ったのは 4日間連続の4会場。今までになく長距離・広範囲の移動で、中にかなり小さな街が一ヶ所混ざっているという、私にとってはかなり難易度の高い旅です。


もしもこの旅でどんな事が待ち受けているか事前に分かっていたら、もしかしたら私はこの旅を諦めていたかもしれません。私としてはそれぐらい大変な旅になりましたが、それは同時に人生最高レベルにエキサイティングで楽しく、心に残る旅でもありました。

自分がまだ本気で困る事が出来て、それを笑っちゃう事が出来るというのは、とても楽しい発見です。 皆さんは最近本気で困った体験、ありますか?私はあります!今回のChesterの初日はその中のひとつです。


英語とひもじさとキッチン

そもそもどうしてこれから書くような事態が起こってしまったのか、改めて考えてみると、問題の本質はやはり英語が話せない、話したくないということに立ち戻ります。

1)現地の人と英語でやり取りするのが怖くて、ひとりで飲食店に入れない。
2)イギリスのスーパーには温めれば食べられる美味しそうなスープやパイが沢山売ってる。(スーパーも怖いけど飲食店よりマシ)
3)電子レンジか、簡単なキッチンが付いている宿に泊まりたい!

そういう流れだった訳です。日本同様、イギリスにもキッチンつきタイプの宿がそこそこあります。私の数少ない経験では、地方では2ベッドルームにフルサイズのキッチンなどファミリー向けの所が多いようです。逆に大都市ではコンパクトな部屋に、最低限のミニキッチンを備えた出張者向け?のところばかりでした。


実は2018年2月の2度目のイギリス旅の際、Bristolでキッチンつきのアパートメントタイプの宿を使ったことがありました。その時は街に到着したら管理事務所に連絡をしてスタッフと待ち合わせ、鍵を受け取り、部屋まで案内してもらうという手順でした。

その時、宿に立派なキッチンが付いていたおかげで、スーパーで野菜とベーコンを買って野菜スープを作って食べることができたという良い思い出がありました。連日の移動と時差ボケと緊張に晒された身には、そういう食事がとっても嬉しい。

そんな経緯もあり、2018年11月の旅では、可能な限りキッチンつきの部屋をチョイスしていたのです。


難しすぎるミッション

この旅では15時半ごろロンドン・ヒースロー空港に到着し、その日のうちにイングランド北部の街、Chesterに入る計画を立てていました。ライブ前の数日、観光する予定です。どうしてChesterへ?それは私が好きなあのミュージシャンの故郷だからです!

Chesterの宿の管理事務所からは1週間ほど前にメールが入り、宿泊日当日に鍵の受け渡しなど詳細のメールを送るという連絡を受けていました。ギリギリすぎるので心配していたのですが、ヒースロー空港に着いてスマホをネットに繋いでみると、メールが来ていることが分かり、ホッと一安心。


ところがこの日はいつにも増してヒースロー空港が混雑しており、ロンドンのEuston駅をChesterに向けて出発した時には、既に19時を過ぎていました。


ヒースローを出た時には良い夕暮れでした。呑気に写真撮ってる場合じゃなかったんですが、写真を撮らなかったからといって何か良いことがあったであろう訳もなく。

鉄道内もとても混み合っていて、賑やかな若者たちと一緒にデッキで立ちっ放しでしたが、道のりはせいぜい2時間半。


Chesterに向かう鉄道内からストーリーにアップしたウキウキのヒャッハー動画。

そんなに長くないしいいか~と思いながら、イヤホンで音楽を聞きつつ、その日の宿の詳細が書かれたメールを改めて確認してみました。ざっくり要約すると、

『22時までに〇×というコンビニエンスストアに行き、レジにいる男性にあなたの名前を告げてください。彼からアパートの鍵とエントランスの電子キーが渡されます。その後〇×ストリートに行き、電子キーでエントランスの門を開けたら右、そこにある扉を電子キーで開けてリフトで2nd Floorにあがるとあなたの部屋があります


本邦初公開、これがMI6(仮)からのメールだ!改めて見てみると、もしかしてネイティブじゃ無い人が書いた?

これは何だろう?テープレコーダーが回りきったところで最後に「幸運を祈る」って言われて爆発するやつかな?イギリスだけに?

チェックインが22時までというのは事前に知っていましたし、恐らく今乗っている鉄道がChester駅に到着するのは21時すぎ。Google Mapで確認すると、Chester駅からコンビニエンスストアまでは徒歩10分程度。よほど道に迷わない限り鍵を受け取るところまでは問題ないでしょう。


Chester到着、鍵をゲットしたところまでは良かったが…

鉄道が到着したChesterの駅は当然もう真っ暗。11月のイギリスは寒いぞ!

それまでイングランド南部から中部までしか行ったことがなかったので、初めての北部の町、しかも好きなミュージシャンの故郷、そしてかつて彼のバンドが結成されたこの街に来ることが出来て感無量です。ロンドンから2時間半なので、北海道で生まれ育った私としては大した距離ではないのですが、なんだか遠くまで来たな~という感覚。

Chesterは英国の中でも特に中世の面影を残した城壁都市として人気の観光地だそうです。英国はどこに行っても歴史ある街ばかりで、旅してても楽しいんですよね。


ついに憧れの聖地Chesterへ!

さて、私は早速指示されたコンビニエンスストアを探さなければなりません。駅を出て繁華街を横目で見ながら街の中心部からは少しだけそれた、繁華街の外れの方角に歩きます。パブとケバブ屋さんはまだ営業中。その先に、あった!目指すコンビニエンスストア。

そこは小さな個人商店のようで、パッとしないサンドウィッチや飲み物、雑誌、洗剤などが青暗い照明の店内に雑然と置かれています。映画みたいだなぁ。

Pod Noodleとチョコレートとビールを買い、ひとつしかないレジで「女性に」名前を伝えました。 どっちでもいいけど、男性じゃない*じゃん!

*そういえば、誰かのペットを褒める時など、性別が分からない時はheにするって聞いたことがある。そういう事かな?

にこやかな女性*に小さな紙包みを渡され、お礼を言って〇×ストリートに向かいます。包みの中に入っていたのは、普通のお部屋の鍵と、ICチップのようなものが入っているらしいプラスチックのキーホルダーのようなもの。

*全体的に見た目が移民ぽい皆さんの方がにこやかな確率が高い気がします。それほどの厳しい競争に晒されているのか、異邦人同士の共感のようなものがあるのか、まだ私には分かりませんが。


この時点で概ね21時半過ぎ。既にかなり不安でした。実はそれまでに何度Google Mapを見ても、宿の場所がはっきり分からなかったからです。通りの名前は確認できるのですが、どの建物なのか分からない。

Street Viewを見ても全てオフィスビルのようで、それらしい建物が見当たらないのです。でもとても小さな通りなので、もしかしたらStreet Viewの更新の後に宿が出来た可能性もありますし、近寄らないと分からない程度の小さな看板やプレートが出ているのかもしれません。現地で確認するしかないと思っていました。


見つからない!

で、 〇×ストリートです。バス通りのパブの角を曲がった小さな通り。ひとけのない通りに街灯が幾つか点いていますが、ひととおり歩いても、案の定というか、宿の建物が分からない。これはまずい。日本であれば客を迎える施設には何かしらの表示とか、 建物の入口に明かりがついてるとか、それなりの設えがあるはず。

でも、そこでは路地の全部の建物が真っ暗で電気もついてない。あとは駐車場みたい。 そんなに大きな通りではないのです。建物は全部で15軒ぐらいで、この通りに面した入り口がある建物は10軒も無さそうです。

道を間違ったのかな?と思って何度もバス通りまで戻ったり、行ったり来たりしましたが、 やっぱりここで間違い無さそう。

心臓がドキドキし始めます。多分20~30分ぐらい、宿を管理しているところの問い合わせ先の電話番号を検索しながら、周辺を歩き回りました。で、管理事務所に電話してみたんですよね、確か。でも当然誰も出ません。メールを送ったってこの時間では仕方ない。うーん。これは詰んだかな。

それまでの旅でも、やむを得ず深夜に外を歩く事は何度もありましたが、22時を過ぎてこんなひと気のない暗い通りに、どっからどう見てもアホ面した観光客のアジア人がスーツケースを持ってひとりで立って、長々とスマホの画面を眺めているのは、流石に怖い。危険すぎます。


この宿は諦めて、駅まで一旦戻って仕切りなおそう。駅のインフォメーションはもう閉まってるかな?駅ならまだ人がいてここよりは安全だろうし、どこかに座って、今日これから予約を受けてくれそうな、分かりやすい別のホテルをネットで探そう…と思い始めた頃、駐車場の金網の柵が開いて、ガシャーンと閉まる音がしたのです。誰か人が出てきた!

誰かが歩き去って行ったのを見届けてから、頑丈そうな鉄の柵に恐る恐る近寄ってみました。大きな観音開きの扉は車が出入りするところのようで、チェーンで施錠されているようです。そしてよく見るとその隣に人が出入りするための扉…。

電子キーを扉のあちこちに滑らせてタッチしてみると、ある場所でカチッとロックが解除される音。なにこれ?ドラクエ?脱出ゲーム?

明るくなってから撮影した宿のエントランス。これはポンコツの私じゃなくても難易度高くない?

これで安心だと思ったら大間違い。敵は手強い。

とにかくホッとしました。駐車場にしか見えませんが、鍵が開いたということはここで間違いない。中に入ってみると、駐車エリアを取り囲むようにいくつも建物が建っているのが分かりました。どれもオフィスビルのようにしか見えませんが、右手に進んでみます。

右、右…すぐに行き止まり。建物はいくつかあって、どこも入り口には明かりがついています。Main Buildingってどれよ!?建物の入り口が5ヶ所くらい。どれが正解か分からないので、目についたところに近づいてみます。

1カ所目…どうも違うみたい。2カ所目…3カ所目…あ、ここに電子キーをタッチしろと書いてある!タッチすると扉が開きました。やったね!ダンジョンクリアもかなり近い?!


さて、もう一度メールを見返してみましょう。リフトで2ndフロアに行って…あなたの部屋は21号室です。すぐ横にエレベーターがあったので2ndフロア、つまり3階に上がりました。

エレベーターを降りると正面の壁に部屋の番号の案内が書かれたプレート。21、21、21…

うん。無い。

SNSでフォロワーさんに「部屋が無いよ〜(泣)」と泣きついていた時の画像。

うん、オラだんだんワクワクしてきたぞ(サイヤ人並み)!プレートに書かれていないだけかな?と思ってフロアの廊下を少し歩きまわってみましたが、21の部屋はありません。22とか23とか24はあるのになぁ。

もう少しなのに惜しい!大体さっきから人の気配が全然しないよー。怖いよー。暗いよー。ここでもぐるぐる10分くらい迷っていたと思います。

どうにもならないので、もう一度地上階に降りてみることに。少しあたりを見渡すと、建物全体の案内図がありました!21、21、21…

1stフロアじゃん!メールの嘘つき!

エレベーターで2階に上がり、フロア案内を見ると確かに21号室が存在しています!ついに到着!イエイ!


やっとたどり着いた部屋が意味不明な間取りの3階建て(1階は巨大なキッチンとトイレ、2階に完全にバラバラの部屋でリビング、バス・トイレ、寝室、3階に何となくオバケが出そうな寝室)で、しかも3階に行く階段の電球が切れてて超怖かったとか、ドライヤーと栓抜きがなくて不便だったとか、買ってきたPod Noodle (Chicken and Mushroom)が口に合わなくて全部食べられなかったとか、そんな事はもう良いのです。この部屋にたどり着いたというプレシャス!どれだけホッとした事か!

しかしこの旅はこの後もドキドキ体験が目白押し。いや~旅って本当に良いものですね!(白目)



初イギリス、初ひとり海外、最初の夜


空港からホテルへ

2017年9月、初めてのひとり海外旅行。東京からロンドンに向かう飛行機の中は、日本人のCAさんや日本人客がいっぱいで、国内気分でいられます。でもヒースロー空港に着いて「行ってらっしゃいませ」という日本語に送られながら飛行機を降りると、そこからはついにひとりです。

ヒースロー空港名物、大行列の*入国審査では、滞在目的と滞在場所、旅行期間は聞かれるかなと予想していたのですが、「現金をどのくらい持ってますか?」の質問は全く想定外で、シドロモドロ。が、答えようとする意思は認められたらしく、入国官が無表情でスタンプを押してくれました。ずいぶん厳しいと聞いていた割には比較的あっさりと通して貰えたかも。

*確かこの時は1時間ぐらい。これでも早い方。


ヒースロー空港の入国審査については、2019年5月からICチップのついたパスポートを持っている日本人観光客は自動化ゲートを通れるようになったそうです。ありがたい!日本国のパスポートのブランドを作り上げた先人の皆さんに感謝です。次回からは待ち時間無く、プレッシャーからも解放されて楽になります!それにしてもここでもICチップ…夢でうなされそう


さて、ここからホテルに向かいます。謎の流れで地下鉄のワンデーカードを入手したので、あとは地下鉄に乗るだけ。空港からその日滞在するホテル最寄りのKings Cross St. Pancras駅までは、地下鉄のPiccadilly Lineで乗り継ぎなし、約1時間の道のりです。


余談ですが、さすが世界中の人が訪れる大都会、ロンドンは交通機関の表示がとても行き届いていてわかりやすい。地下鉄、鉄道、バス、どれもみんな東京よりもずっと使い方が簡単だと思います。

ロンドンに限らず、イギリスでは落ち着いて案内表示をしっかり見ていれば、行き先を間違える事はほとんどない…かな?でもロンドンのCircle Lineだけはちょっと苦手です。同じホームに違う行き先の電車は入れないでプリーズ!


Kings Cross St. Pancras駅

地下鉄から眺めていると、ちょうど日が暮れる時間帯で、 外がだんだん暗くなってきました。地下鉄の中は完全に多国籍。私の不安は募るばかり。到着したKings Cross St. Pancras駅周辺は、地方からの鉄道と地下鉄駅が集合する巨大な場所でした。帰宅する人の流れに逆らってホテルを目指します。

9月の夜の冷たい小雨が降る中、ヒサシや屋根もない路上で寝ている人もそこここに見かけます。駅周辺の歴史のありそうな威圧感のある立派な建物と対照的です。


そこら辺の建物がザ・大英帝国の威光で常に威圧してくる

事前にGoogle Street Viewで周辺の様子は把握していたので、スムーズにホテルに到着。ホテルのドアに近寄ると、にこやかなドアマンが荷物を持ってレセプションまで案内してくれます…イギリス人に初めて笑顔で接してもらったかも!


ホテルのチョイスは失敗のような嬉しいような

最初のホテルのチェックイン…は、実は失敗でした。ただでさえ容赦ないスピードで説明を受けて理解度3割ぐらいのところに、最後に「朝食はどうしますか?」と聞かれ、「食べます」と言ってしまったのですが、これが失敗です。特に朝食券などをくれるわけでもないので、どうしたら良いのか分からず、結局朝食を食べませんでした。が、後日しっかり料金は引かれてしまいました。

これはもうコミュニケーション出来なかった自分が悪いので仕方がありません。分からなかったら恥ずかしくてもちゃんと聞き返すんやで(未だに出来ない)。イギリスではどうやら日本と違って、朝食会場に行って部屋番号をスタッフの人に言う方式のようです。控えとか朝食券はありません。


最初のひとり旅ということで、この2017年の英国旅では、総じて高めのホテルを予約していました。そしてこの初日のロンドンのホテルとは確認したい事もあり、事前にメールのやり取りをしていたのです。その中で「ロンドン初めてなので楽しみにしています!可能な範囲で眺めのいい部屋だと嬉しいです!」とか確かに書いたんですが、実際チェックインして指示されたフロアに行ってみると、なんとそこは最上階。

廊下のつきあたりには一般客が入れないような大きな扉があり、その先は特別フロアのようです。私はその手前でしたが、それでも充分広くて立派なお部屋。身の置き所がない。ワガママ言ってほんとスイマセンでしたありがとうホテルの人。


もしかしてひとりで泊まったらアカン部屋じゃないだろうか。

とにかく窓の外の眺めが素晴らしいのです。はるか彼方まで広がるロンドンの夜景。全体的に光が暖色系でした。建物の色のせいでそう見えるのかな。カーテンを閉めるのがもったい無くて、寝るまでずっと開け放しにして過ごしました。


人はなぜ紐を引っ張ってしまうのか。そこに紐があるからです。

おしゃれすぎてどうやってトイレを流すのか分からなくて、とりあえず眼の前にあった紐引っ張ったらフロントから電話来ちゃったよね。一応お約束だからやっておかないと。


とにかくホテルにチェックイン出来たので、少なくとも2日間は屋根のあるところで眠ることが出来ます。ホッとしてやっと実感がわいてきました。

高校生の頃、The Clashが好きで、Portobello Marketとか、Brixtonとか、どんなところなんだろうな〜いつか行けるのかなぁと妄想してたあの「ロンドン」が今、目の前に!Joe Strummerが生きているうちに来たら良かったなぁ。でも、今更だけど私、本当にロンドンまで来ちゃった!


Scala London

大好きなミュージシャンについては、ネットでは毎日欠かさず情報をチェックしていましたが、本当に実在するのか実感が全然なかったのです。ロンドンに居るってことは、同じ街の空気を吸ってるってことに…わーどうしよう!しかも明日は実物ががががががggggg!キャーーーー!

この時点で夜の8時ぐらいだったでしょうか。ちょっと危ないかもしれないけど、でも、明日のライブの会場を見に行っちゃおう!あと、出来れば何か食べるものを買ってこよう!

ホテルから会場までは小雨の振る中、 歩いて10分ほどだったかと思います。後にライブ版が発売される事になる、あのScalaです。駅から歩いて10分もかかりません。夜8時ごろだったので、多分誰かのライブ真っ最中。明日はここで自分がライブを見るのです。感無量!(まだ始まってない) とりあえず写真。


はーるばる来たぜロンドン!

で、確か駅のお店でサラダを買った。店員さんがニコリともしなくて怖くて。で、駅の中で他の場所にM&Sを見つけて、ビールとフルーツを購入。ビールは種類が沢山ありすぎて未だに何がなんだか分かりません。

そして「明日はご飯も絶対 M&Sで買おう(店員さんさっきより怖く無さそうだし)」って思ったんだっけ。スーパーで買い物するのも緊張しすぎて苦痛だったなぁ…。この旅はこの後も全体的にひもじい感じで進んでいきます。なぜなら買い物するのが怖いから。


なんでも写真に撮っておくというのは大事ですね。豆のサラダだった。

豆のサラダとフルーツとビール。食べながらご満悦でSNSに「日本からライブ見に来てロンドンに着いた!もう明日のScalaチェックしてきたよ!」って投稿したら、 なんとアーティストご本人が「みんな明日はロンドンで会おう!」と投稿するのに私の写真を使ってくれて

「うわぁあああああああああ私の写真んんんんん!!!!!」

って大興奮しながら朝方に寝た。幸せな初日*…

*偶然にもイギリス行く時に借りているモバイルWiFiの会社から「今日はあなたが始めて弊社の商品を使った日です!」ってメールが来た。イギリス初日は、2017年の9月20日でした。タイムリーだなぁ。


Oyster Cardを買うのに苦労した話


Photo by Joseph Balzano on Unsplash

クレジットカードはICチップ必須

すでに書いた通り、私は2017年に初めてイギリスに行った際、ICチップのない、磁気のみのクレジットカードしか持っていなかったために、旅行中ほとんどの店でカードが使えないという悲劇に見舞われました。

Oyster Cardを気軽に買うことができるロンドンの地下鉄駅の券売機も、ICチップ付きカードのみの対応です。2019年現在、日本で一般的に入手できるクレジットカードはもう殆どがICチップ付きだと思いますので、あまり心配はいらないと思います。

しかし念の為、 海外に旅行に行く際には、ご自分のカードに間違いなくICチップが付いていることと、暗証番号、利用限度額は確認しておくことをおすすめします。旅行前にカードで旅行の為の買い物を沢山して、いざ現地に行ったら限度額ギリギリになっていて、ほとんどカードが使えなかった…などのうっかりも避けたいところです。


Oyster Card(オイスターカード)とは

交通系ICカードに急に「牡蠣」って名づけちゃう躍動感がイギリス人ぽくて良いと思います。

Image by Ron Porter from Pixabay

さて、Oyster Cardです。 Oyster Cardはロンドンエリアで使える交通系ICカードです。デポジットは5ポンドで、必要な金額を駅の券売機などでチャージして使用します。(カードを返すと5ポンドが戻って来るそうです) ロンドンエリアは広大で、ヒースロー空港もロンドンエリアの中に入っています。

国内の旅行でも同じですが、不案内な土地の移動で、電車やバスの切符を乗車の都度買うのはストレスがたまります。 Oyster Cardがあれば地下鉄やバスに乗る際、黄色いパネルにカードをタッチするだけで良いので、 残額には気を配る必要はあるものの、基本的にはとても便利だし気が楽になります。

地下鉄が混雑しがちなロンドンではOyster Cardの利用が推奨されており、利用を促進する為、一日の利用がある一定のボリュームを超えたら、それ以降課金されないようになっていたり、切符を買うよりかなりディスカウントされた料金で乗ることができたりと、高いインセンティブが設定されています。バスに至ってはOyster Cardを持っていないと乗ることもできないとのこと。1日だけならワンデーカードでも問題ないと思いますが、数日滞在したり、今後も何度かロンドンを訪れる事になりそうな場合は入手したほうが良さそうです。

ロンドン名物ダブルデッカー。2階に行くか1階にとどまるか、いつも迷ってしまう。Oyster CardとGoogle Mapさえあれば、ロンドン近郊はどこでも大丈夫!

Oyster Cardの入手

Oyster Cardは事前に日本で購入する事も可能ですが、手間や送料を考えると、現地入手する予定で問題ない*と思います。ロンドンの地下鉄駅の券売機や、駅に入っているキヨスクのようなお店で気軽に買うことが可能です。SuicaやPasmoのようなものですね。但し、日本のように交通機関以外の小売店や飲食店で使える場所はあまり見かけません。

* 面倒に陥る可能性も無くはないですが…私のような間抜けな例はあくまでレアケースだと思います。

地下鉄駅の券売機はありがたいことに日本語表記に切り替えることができます!Oster Cardが買えてチャージ(Top Up)ができるマシンと、チャージのみのマシンがあるので気をつけましょう。画面の一番下には国旗が並んでいて、日本の国旗を選ぶと日本語に切り替わります。「新規カードを購入する」を選んで、必要なカードの枚数とチャージ金額を選んで、現金を入れるか、クレジットカードを入れてカードの暗証番号を入力したらOKです。とても簡単です!私でもできました。


どうしてこうなるの!?

さて、ここからが私、独自のトラブルです。なぜか券売機からOyster Cardが出てきません。画面上は通常に取引が終わった様子で、特にエラーなどが発生している様子もありません。ただ、物理的にカードが出てこない。

意外なところに取り出し口があるのかな?と泣きそうになりながらあちこち覗いてみましたが、どこにも見当たりません。大抵、駅のチケット売り場には係員のような、ガードマンのような方が立っていて、この時も制服を着た190cm×120kgはありそうな大柄な男性が近づいてきて「どうしました?」と声をかけてくれました。「私のオイスターカードが無い…お金を入れたんですが…」「いくら入れました?」と言いながら、券売機を拳骨でガンガンで叩き始めます。「5ポンド、プラス30ポンド…35ポンドです」

散々機械が殴りつけられた後(私のせいでゴメンよ機械)、別のスタッフが呼ばれて券売機の裏に入っていきました。雑談を交わすほどの英語力も無い私は、 ニコリともしない大柄な男性スタッフと2人、無言で立っているしかありません。こういう時に天気の話でも出来ると良いんですけどね…。そのまま待つこと約15分。何がどうなったのかはわかりませんが、とにかく機械のどこかにつまっていたらしい私のカードが取り出され、ついに30ポンドがチャージされたOyster Cardを入手することができたのでした!ブラボー!

この手のトラブルは自分では避けようがありません。 ただOyster Cardを買うというだけでこれほどの大騒ぎ。 しかし Oyster Cardを到着初日に買おうとしたら売り切れておりその後2つの駅に立ち寄っても買うことが出来ず、この駅でやっと入手できたOyster Cardは私の目には宝物のように輝いて見えたのでした。(先が思いやられる…)


Introduction 初めてのイギリス


初めてのロンドン・ヒースロー空港

2017年9月。少し暗くなり始めたロンドン・ヒースロー空港のターミナル5にひとりで降りたった私は、いきなり途方に暮れていました。

世界でもかなり厳しい水準といわれている入国審査を無事に通り、地下鉄駅でOyster Card(日本でいうSUICAやPASMO)を購入し、その日泊まるロンドン市内のホテルまで移動してチェックインする。 初日の私のミッションはこれだけです。

ターミナル5に到着したという事は、つまりBRITISH AIRWAYSに乗ったということです。

Oyser Cardが売り切れ?!

ところが「Sightseeing!」の連発と日本人お得意のオリエンタルスマイルで入国審査を突破し、地下鉄駅にたどり着き、券売機の前に立つと…なんと全マシン Oyster Cardが売り切れ!(多分)今到着したばかりと思われる家族連れも困ってウロウロしています。駅なのに売り切れって何?無いわー、本当に無いわーと思いましたが、他にマシンも見当たりません。英語が話せないので誰かに聞くのは最終手段です。

ほかに買うところは?キヨスク的なお店でも買えると読んだような?でも近くにお店も見当たらず。空港まで戻る?やっぱりこの券売機で何とかならないかな?と、恐らく5分ぐらい逡巡していたでしょうか。(体感的には15分ぐらいに感じられましたが)


救いの神降臨

するとそこにダークスーツを着たビジネスマンが颯爽と登場したのです。気が付いたら急に目の前に。「これ、今日の地下鉄一日券。僕はもう使わないから君にあげるよ。今日一日しか使えないよ。それじゃ!(英語)」的なことを早口で言って(多分)、「さ、さ、さんきゅー!」という言葉に、映画のように後姿で片手を挙げて応え、その人は早足で空港の方に去って行ったのでした。

何を言っていたのかよく分かりませんでしたが、とにかくその日の日付のone day ticketをくれた*ので、概ね上記のようなことを言っていたに違いありません。黒い髪がクルクルしていてスマートで小柄で、どちら様か分からないけどカッコいい!もしかして亡くなったおじいちゃんか誰かが化けて出てくれたのかもしれません。

*もちろんこれはキセルの一種です。本来やってはいけない事ですが、追い詰められていた心情をお察しください。

とにかくあなたは神だ!もしくは神が私に遣わした何かだ!今日はこれをありがたく使わせてもらってホテルまで行き、そして明日ホテル近くの駅でOyster Cardを買おう。ロンドンは良いところだ、みんな良い人だ(単細胞)。脳内にサイケなお花畑が広がりつつ、私は地下鉄に乗ってホテルに向かったのでした。


常識知らず

そして、このOyster Cardに端を発して明らかになった問題が、この初めての英国ひとり旅の間ずっと付きまとう事になることを、この時の私は知る由もないのです。無知というのは本当に恐ろしい。後になって振り返ってみると、自宅を出た時点でこの旅は私の「負け」でした。致命的なミスを犯し、それに気づかぬままイギリス入りしていたのです。

例えるなら「ええっ?!国際線の飛行機に乗り込む時に靴を脱がなきゃならないって話はウソだったのかい?(マスオさんの声)」 レベルの話です。 誰もそんなことを航空会社に問い合わせしてわざわざ確認したりしません。大概の人はそんなのウソだって知ってます。私以外は。

そもそも1週間も会社を休むだけでドキドキ… 休みがいただけないなら退職も…と上司を脅(略)

私は非常に心配性で、しかも英語が話せず、初めての海外ひとり旅、初めてのイギリスということで、事前の情報収集はそれなりにしていたつもりでした。イギリスに詳しかったり、海外ライブに慣れているフォロワーさんに、SNSを通じて多くのアドバイスもいただいていました。しかしどれほどネットで情報を下調べしていても、現地に行かなければ分からないことが当然ながら、相当沢山あります。

それに日本での「常識」についても、全て網羅しているかというと、やっぱりそうではないのです。私は日常の99%は半径5キロ圏内で過ごしているので、仕方がないのです。人間力が圧倒的に足りてない。わざわざ9,000キロも離れたところまでひとりで旅をして、一番身近であるはずのダメな自分を再発見して帰ってくるという情けないお話です。そういうのは出来れば自宅周辺で発見しておきたい。自宅周辺が無理ならせめて国内で。

という訳で、私の旅には、旅慣れた方から見るときっと鼻で笑ってしまうようなことが沢山起こります。そういう方には笑って欲しいですし、そうでない方には笑いながら(読んでおいて良かった・・・)と心の中でこっそり思っていただければ幸いです。