イギリスとクレジットカード


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現金派?クレジットカード派?

突然ですが皆さん、クレジットカードってどんな風に使ってますか?

「毎日使うよ!」「現金派だから基本持ち歩いてないよ」「クレジットカードにはもう二度と手を出すなって家族から言われてる」「審査に通りません…」等、クレジットカードとの付き合い方は人それぞれですよね。

私はイギリスに行きはじめるまでは、ローンを組む感覚でしかクレジットカードを利用していませんでした。少し大き目の買い物をする時だけカード払いで、その他は全て現金払い。何となくの習慣です。


ヨーロッパではクレジットカード必須

しかしヨーロッパに行くとなると話は別です。私が数十年前にヨーロッパに行った時には、すでに現地では日常的にクレジットカードが使われていました。

2017年秋、初めてイギリスへ行く旅で、私は手持ちのクレジットカードを2枚持っていこうと考えていました。いずれもカード会社に暗証番号を確認し(何故か地元ではカード使用の際に暗証番号を聞かれたことがありません。全てサインです。田舎?)、ポンドと円で現金も準備をして、お金についてはもう安心、と思っていたのです。


イギリスと日本の(私の)カード事情の違い

思い返せば、自分の過ちに気がつくのが遅れたのは、最初のホテルのチェックインで問題なくカードが使えてしまったから、かもしれません。宿泊料は事前に決済済みでしたが、チェックインする時にフロントの方が説明してくれたところによるとどうやら、そのホテルではデポジットが100ポンド要る、ホテル内での利用がなければ全額後で返金される、ということのようでしたので、カードを手渡しました。そこでは何も問題なく使用が出来たのです。

なんか変だぞ?と気づき始めたのは、「ロンドンに到着したけどOystar Cardが買えなかった事案」の翌日、憧れのミュージシャンのライブを見られる当日の事でした。 せっかくロンドンに来たんだから少し観光でもしよう、まずはAbbey Road Studioかな?と、ホテルを出た私はぶらぶら歩いてビートルズファンの聖地に向かったのです。

これがAbbey Road Studiosだよおっかさん(*母はストーンズ派です)

途中で小さめの地下鉄の駅があったので、立ち寄ってみましたが、券売機に私のクレジットカードを入れても反応しないのです。操作が分からない。ここで最初に「?」と思いました。機械の調子が悪いのかな?(ポジティブ)

次に見つけたのも小さな駅でした。カードを差し込んでも情報を読み込んでくれません。なんだろうなぁ。最悪、現金で買ってもいいんだけど…。でも何かがおかしい…?(鈍い)

「誰かに聞けばいいのに」と思うでしょう。私もそう思います。でも聞けないんですよ。ネットで調べられる事であれば、ギリギリまで諦めずに検索したい。もちろん英語が話せないからというのが一番の理由なのですが、元々の性格というのもあります。あんまり人に話しかけたりしたくない。散々検索しましたが、「ロンドンの地下鉄駅で使えないクレジットカード」について、情報を見つけることが出来ませんでした。

3つ目の駅でもカードが使えず、「???」と思いながら、すっかり歩き疲れていたので、Oyster Cardはやむを得ず現金で購入することにしました。5ポンドのデポジットと30ポンドのチャージ。実はここでもまた問題が発生したのですが、それはまた別の話です。


石のお金?

その後買い物の際にカードを店員さんに渡す、読み取ろうとしても機械が反応せず、店員さんが怪訝そうに首を傾げてカードをしげしげと眺める、などの事態が連続発生。周りを観察して、鈍い私もさすがに問題を理解し始めました。


2019年の現在ではかなり日本でも状況が変わってきましたが、2017年当時、私の地元札幌では、カードを店員さんに渡した時の動作は、読み取り機械の横に設けられた細い溝にカードを滑らせて、カード裏の磁気情報を読み取ってくれる、というのがほとんどでした。ほとんど、というより私が知る限り100%その方式でした。

でもイギリスのカード読み取りは違いました。溝にカードを滑らせていない。周りから暗証番号の入力が見られないように小さな覆いのついた、手のひらサイズのテンキーのような端末です。ホテルのカードキーのように自分でカードを差し込んで、暗証番号を入力して決済するものです。最近日本でもよく見かけるようになりましたよね。


で、私のカードです。2枚ともICチップ、付いていません。恐る恐るカード会社のサイトを見ると「2018年から新しいカードに切り替えの際、順次ICチップ付きのものをお送りします」と記載があります。

…遅いんじゃー!!!!!

つまり「原始人の日本人が現代のイギリスに石のお金持ってきちゃった、てへっ(はーと)」ということのようです。そりゃ使えませんよね…。どうやらスキミング対策のため、EUでは何年も前にクレジットカードにICチップを搭載することが義務化されていたみたいです。なるほど〜。この旅では、使える場所ではカードを使い、あとは現金を大切に使っていくしかありません。


まだIC無しのクレジットカードが使えるところもある

問題を自覚した時に最初に心配したのは、鉄道のチケットのことでした。日本からオンラインで予約していた全ての乗車券と指定券を、指定した駅の機械で自ら発券する必要があり、それには決済時に使ったクレジットカードが必要だと記載されていたからです。

ドキドキしながら指定した鉄道駅に行ってみると、幸い発券機はICチップなしのクレジットカードにも対応していました。良かった!もし使えなかったら、窓口に行ってこのややこしい事態を英語で説明しなければなりません。もしくは予約していたチケットを全て諦めて買い直さなければなりません。本当にホッとしました。


この旅の間、石で出来た私の原始的なクレジットカードをあちこちで差し出してみました。ホテルのフロントは全て使用OKでした。それとハロッズ。高級デパートのハロッズは大丈夫ですよ皆さん!おもちゃ売り場でクマのぬいぐるみを買って、恐る恐る「このカードは使えますか?」と差し出してみたところ、素敵なお姉さんが「もちろんですわ、マダム」とニッコリ微笑んで、円建てにするかポンド建てにするか聞いてくれました。さすがハロッズ。大好きハロッズ。いつかあそこのデパ地下のオシャレなイートインで何かを食べるのが夢ですが、たぶん一生無理かな。

イギリスにライブを見に行くたびに、好きなミュージシャンの身代わりとしてクマをひとり連れ帰るという風習があります 。10体ぐらい貯まったら本人と交換して貰えないでしょうか。ダメですか。

帰国ののち、持っていたカードの片方を即効解約し、ICチップのついた新しいカードを入手しました。以降、イギリスではどこに行っても自信を持ってカードを使っています。そして普段から使ってないと常識についていけないなと殊勝に反省し、今では日本でもほとんどの支払いを電子マネーとクレジットカードで行っています。原始人から現代人へ。石のお金から電子マネーへ。進化を遂げた私とクレジットカードのお話でした。


英語事始


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私と英語

私の過去の英語経験?については、取り立ててお話するような事は何もなく、学生時代、特に得意だった記憶も無ければ、特別苦手だったという記憶もありません。大学時代は恐らく一般の文系学部より多少は多めの英語関連の単位を取る必要がありましたが(といっても英語の専門学部などではありません)、それで苦労をしたということもありませんでした。


イギリス旅行に英語は必要か

とにかくイギリス旅行には英会話が必要…

と思われがちですが、実は、日本で必要な手配をして、ライブを見に行って帰ってくるだけなら、ほとんど英語を話さなくても何とかなると思います。実際、何とかなりました。

便利な世の中です。英語で書かれたWEBサイトで色々準備をする必要がありますが、 イギリスに限っていえば、 クレジットカードと辞書や翻訳サイトを使えば大概の事は何とかなります。つまり「ネット上の英文がそこそこ読めれば」、飛行機、宿、鉄道の乗車券と指定券、ライブチケット、全てオンラインで手配が可能なのです。

よほどコミュニケーション能力が高くて度胸がある方なら別ですが、冷や汗をかきながら現地でネイティブの方と英語で会話を試みるよりは、事前に念入りに準備をしていったほうがずっと楽だと思います。

ただし、最低限の人的接触は避けられません。ホテルや飛行機のチェックインで毎回緊張し、困ったことがあった時に誰かに声をかけるのにかなりの勇気を要し、スーパーで買い物するのにレジの順番が近づいてきただけでドキドキし、 恐ろしくて飲食店にはほとんど入ったことが無い、という状況のままで、これからも旅を続けたいのかといわれると、それなりに辛い。やはり少しは英語の勉強を頑張ったほうが旅行は楽になるとは思います。


私の英語学習のモチベーション

実は「少しは英語を勉強したほうが楽になる」…というのは、個人的な気持ちとしてはちょっぴりウソです。

正直言って「切実に」英会話の必要性を感じています。

ライブを見るために初めてひとりでイギリスに行った際、英語力の必要性を痛感して帰ってきました。

一番の問題は、ライブ中にステージでミュージシャンが話しているMCの内容が全く分からない!そして運良くミュージシャンの皆さんに直接会う機会があっても、何も話せないことです!

最前列でライブを見てても、何を言ってるのか全然分からないのです

ライブの曲間にミュージシャンがステージで何かジョークを言って、オーディエンスが爆笑したりして、みんな楽しそうなんですよとても。時には客席とステージで会話したりして。それを聞いてみんながまた笑ったりして。それが私だけ全然分からない。みんないいなぁ、楽しそうだなぁ、と思います。

そしてライブ後に運良くご本人に会えたとします。サインプリーズ?といえばサインしてくれるし、フォト?プリーズ ?って言えば一緒に写真を撮ってくれますよ、そりゃ。ろくに英語も話せないのにイギリスまで自分たちのライブを見に来てくれたファンを、邪険に扱うミュージシャンは恐らくそんなに多くはありません。

でもそうじゃないんですよ!もっと色々言いたいんです。自分が日本から見に来たこととか、今日のライブも最高でしたとか、日本でも沢山のファンがあなたを待ってますとか、色々伝えたい事があるわけです!

それに英語が分からないままでは、ラジオやYoutube、ポッドキャストでインタビューを聞いても、この先ずっと「良い声だな〜」としか思えないということになります。もしかしたら重要な発表をしているかもしれないのに!

さらにいうと、万が一異世界にワープして、大好きなミュージシャンとアフタヌーンティーをご一緒するような事件が起きたらどうしたらいいんでしょうか(妄想)。何も会話が出来ない。これは由々しき問題です。 会話してる時にGoogle翻訳を立ち上げてそこに音声入力してもらってそれを日本語に翻訳するのはマヌケのひと言です。全然楽しくない。そんな事では2度目のアフタヌーンティーのお誘いは来ないでしょう(妄想)。切実です。


私の英語レベル

さて、英語の話です。私が一番最後にお金を払って試験らしきものを受けたのは25年ほど前でしょうか。当時、多分TOEICで600点ぐらい、TOEFLで500点ぐらい、英検は最後に取ったのが2級だったような気がします。恐らくその頃が私の英語試験の点数のピークだったと思いますが、その時でさえ英語での会話はほとんどできませんでした。(昔は試験にスピーキングセクションなどというものは無かったのです。)

そして2017年、イギリスまでライブを見に行こうと決心した時の私の英語の状況は、下記のようなものでした。

・20年以上英語の試験を受けていない。
・公私共に英語を読み書きする機会も必要も無い。
・20年以上外国人にもかかわりは全く無い。英語で道を聞かれる機会すら無い。
・パスポートはとっくに切れており、最後に海外に行ったのは15年ぐらい前(観光旅行)。

これは正直言って旅行にも事欠くレベルです。英語が全く口から出てこない状態。 誇張ではなく、サンキューとハローぐらいしか言えないし、当然現地のイギリス人が話しているスピードの英語は、言葉ではなく、ほとんどただの音にしか聞こえません。


私が必要とする英語

私に必要なのはTOEICでも英検でもIELTSでもありません。 私の職場では昇進するのに TOEIC のハイスコアが必要な仕組みなどありませんし、そもそもその気も無い。外資系企業に勤める気も無いし、留学する訳ではないし、今更アカデミックな世界に行きたい訳でもありません。英文学を原書で読みたいとか、映画やドラマを字幕無しで見たいとか、そんな大それたことは全然考えていません。

私の英語学習の目標は、イギリス旅行中に出会う人々が何を言っているのか分かるようになること。自分で言いたいことが言えること。そして現地で飲食店に気軽に入れるようになることです。

考え方によっては試験で高得点を取るよりも難しいこの課題に2017年から取り組んだり諦めたり、また取り組んだりしています。昔以上にポンコツになった頭で、ほとんどゼロからやり直しの英語学習が続いています。


おまけ

落語家の柳家小三治さんが50歳ぐらいの時に一念発起してアメリカに3週間の語学留学をした時の話。

小三治さんが現地の語学学校になんとかひとりでたどり着いてみると、どういうわけか既にコースが始まっており、 受付の人がどうやら途中参加は許可できないというような事を言っている(らしい)。そして入学の手続きをしてくれない…。

「最終学歴は予備校中退、英語の最終学歴は中学二年生」の小三治さんが、涙目になりながらどうやってそれを乗り切ったか。

少し長いですが*、英語が出来ない人間として本当に、心から気持ちが分かるし、いつもの事ながら面白すぎます。小三治さん、私も英語の勉強頑張ります!

*長いですが音声のみなので、家事などしながら気軽に楽しめると思います。


Introduction 初めてのイギリス


初めてのロンドン・ヒースロー空港

2017年9月。少し暗くなり始めたロンドン・ヒースロー空港のターミナル5にひとりで降りたった私は、いきなり途方に暮れていました。

世界でもかなり厳しい水準といわれている入国審査を無事に通り、地下鉄駅でOyster Card(日本でいうSUICAやPASMO)を購入し、その日泊まるロンドン市内のホテルまで移動してチェックインする。 初日の私のミッションはこれだけです。

ターミナル5に到着したという事は、つまりBRITISH AIRWAYSに乗ったということです。

Oyser Cardが売り切れ?!

ところが「Sightseeing!」の連発と日本人お得意のオリエンタルスマイルで入国審査を突破し、地下鉄駅にたどり着き、券売機の前に立つと…なんと全マシン Oyster Cardが売り切れ!(多分)今到着したばかりと思われる家族連れも困ってウロウロしています。駅なのに売り切れって何?無いわー、本当に無いわーと思いましたが、他にマシンも見当たりません。英語が話せないので誰かに聞くのは最終手段です。

ほかに買うところは?キヨスク的なお店でも買えると読んだような?でも近くにお店も見当たらず。空港まで戻る?やっぱりこの券売機で何とかならないかな?と、恐らく5分ぐらい逡巡していたでしょうか。(体感的には15分ぐらいに感じられましたが)


救いの神降臨

するとそこにダークスーツを着たビジネスマンが颯爽と登場したのです。気が付いたら急に目の前に。「これ、今日の地下鉄一日券。僕はもう使わないから君にあげるよ。今日一日しか使えないよ。それじゃ!(英語)」的なことを早口で言って(多分)、「さ、さ、さんきゅー!」という言葉に、映画のように後姿で片手を挙げて応え、その人は早足で空港の方に去って行ったのでした。

何を言っていたのかよく分かりませんでしたが、とにかくその日の日付のone day ticketをくれた*ので、概ね上記のようなことを言っていたに違いありません。黒い髪がクルクルしていてスマートで小柄で、どちら様か分からないけどカッコいい!もしかして亡くなったおじいちゃんか誰かが化けて出てくれたのかもしれません。

*もちろんこれはキセルの一種です。本来やってはいけない事ですが、追い詰められていた心情をお察しください。

とにかくあなたは神だ!もしくは神が私に遣わした何かだ!今日はこれをありがたく使わせてもらってホテルまで行き、そして明日ホテル近くの駅でOyster Cardを買おう。ロンドンは良いところだ、みんな良い人だ(単細胞)。脳内にサイケなお花畑が広がりつつ、私は地下鉄に乗ってホテルに向かったのでした。


常識知らず

そして、このOyster Cardに端を発して明らかになった問題が、この初めての英国ひとり旅の間ずっと付きまとう事になることを、この時の私は知る由もないのです。無知というのは本当に恐ろしい。後になって振り返ってみると、自宅を出た時点でこの旅は私の「負け」でした。致命的なミスを犯し、それに気づかぬままイギリス入りしていたのです。

例えるなら「ええっ?!国際線の飛行機に乗り込む時に靴を脱がなきゃならないって話はウソだったのかい?(マスオさんの声)」 レベルの話です。 誰もそんなことを航空会社に問い合わせしてわざわざ確認したりしません。大概の人はそんなのウソだって知ってます。私以外は。

そもそも1週間も会社を休むだけでドキドキ… 休みがいただけないなら退職も…と上司を脅(略)

私は非常に心配性で、しかも英語が話せず、初めての海外ひとり旅、初めてのイギリスということで、事前の情報収集はそれなりにしていたつもりでした。イギリスに詳しかったり、海外ライブに慣れているフォロワーさんに、SNSを通じて多くのアドバイスもいただいていました。しかしどれほどネットで情報を下調べしていても、現地に行かなければ分からないことが当然ながら、相当沢山あります。

それに日本での「常識」についても、全て網羅しているかというと、やっぱりそうではないのです。私は日常の99%は半径5キロ圏内で過ごしているので、仕方がないのです。人間力が圧倒的に足りてない。わざわざ9,000キロも離れたところまでひとりで旅をして、一番身近であるはずのダメな自分を再発見して帰ってくるという情けないお話です。そういうのは出来れば自宅周辺で発見しておきたい。自宅周辺が無理ならせめて国内で。

という訳で、私の旅には、旅慣れた方から見るときっと鼻で笑ってしまうようなことが沢山起こります。そういう方には笑って欲しいですし、そうでない方には笑いながら(読んでおいて良かった・・・)と心の中でこっそり思っていただければ幸いです。